<<人脈と世界が広がる馬主道>>
第4回:お金の話①〜減価償却と馬
事業的規模なら損益通算可能 タイミング戦略としても有効
今回は、馬にまつわるお金のうち、馬の減価償却について解説する。
馬主というと、多くの人が「ロマン」「趣味」「道楽」というイメージを持つだろう。しかし実際のところ、馬はれっきとした事業資産だ。特に不動産オーナーにとっては、不動産事業と極めて親和性の高い「税務戦略型資産」である。
馬の減価償却の仕組み
競走馬は税務上では「事業用動産」に該当し、減価償却の対象となる資産だ。競走馬を購入した場合、その取得価額を耐用年数の期間に分割して経費とすることができる。
耐用年数は資産ごとに定められており、競走馬の耐用年数は原則4年となっている。例えば、取得価額1200万円の馬を購入した場合、「1200万円÷4年=1年あたり300万円」となり、4年間にわたって毎年300万円を減価償却費として計上することができる。(※定額法の場合)
減価償却で重要なのは「キャッシュは最初に一括で出ていくが、経費としては分割して計上できる」という点だ。これは不動産も同じだが、馬と不動産にはいくつか異なるポイントがある。
不動産との違い
不動産の場合、減価償却の対象となる資産は建物だけだ。土地は経年によって価値が下がらないため、減価償却ができない。土地と建物を合わせて購入した場合は、建物だけが減価償却の対象となる。
一方、競走馬は取得価額の全額が償却対象だ。つまり投下資本の100%を経費とすることができる。これは非常に大きな違いである。
また建物は年々価値が下がっていくのに対して、馬は評価が跳ね上がる可能性がある点も違いの一つ。競走馬も償却して帳簿価額は下がっていくが、レースの成績次第ではその市場価値が上がるのだ。「帳簿価額と実勢価格の逆転現象」が起こり得るのである。
収入についても異なる。不動産事業から発生する収入は、主に家賃と売却益だ。一方で馬主活動による収入は、競走馬がレースで獲得する賞金・出走奨励金をはじめ、種牡馬や繁殖牝馬となった場合の収入、生まれた子馬の販売による収入など、多層的である。
競走馬は減価償却で経営を守りながらも、大きなリターンが期待できる、攻めの構造を持っているのだ。
- ▲牧場視察も馬主として重要な活動だ
法人馬主は節税効果が高い
所得の計算に関していえば、法人馬主か個人馬主かによる違いも大きい。法人馬主の場合、馬の購入金額、預託料(馬の飼養管理費)、遠征費、保険料を、すべて損金に算入することができる。ある程度利益が出ている法人にとっては、馬主活動が課税所得を圧縮する手段になる。
例えば、年間利益が2000万円ある法人が1200万円の競走馬を購入したとする。この場合、競走馬の減価償却費300万円と年間預託費400万円の計700万円を経費計上でき、税率30%であれば、約210万円の税負担が軽減される。この競走馬の取得を、法人が不動産を売却して利益が出た年に行えば、その売却益を圧縮できる。もちろん節税目的だけで購入するのは危険だが、タイミング戦略としては極めて有効だ。
個人馬主の場合も経費計上が可能だが、赤字が出た際に損益通算ができるかどうかは状況による。個人馬主は単なる趣味として事業性が否認されるリスクがあるからだ。損益通算の可否は、馬主活動が事業として成立しているか否かが重要なポイントである。

▲1月に生まれたばかりの牝馬
馬は合理的な投資対象
耐用年数が数十年ある不動産と異なり、馬の耐用年数はたった4年だ。つまり、その分資金の回転が早く、成功も失敗も短期間で確定する。そして当然ながら、競走馬にも未出走引退や、けが、成績不振といったリスクがある。帳簿価額が残っている段階で引退する場合は、評価損処理となる。
競争馬はロマンだけではない。不動産とは似て非なる資産だ。その性質を理解すれば、極めて合理的な投資対象となる。私はいつも「夢と数字は両立できる」と言っているが、馬はその象徴だ。馬の減価償却を理解することは、税務知識を身に付けること以上に、経営者としての視座を高めることにつながる。
次回は、引退時の特別損失や、帳簿上の価値がゼロになった馬の新たな価値について解説する。馬が戦略事業になると、不動産と馬という2本柱で、経営はより立体的に進化していくだろう。
小口でも減価償却できる
馬主の中には、1頭の馬を複数人で共有する共有馬主や、クラブ法人が所有する馬に出資する一口馬主も多い。
例えば、10分の1口の共有馬主として120万円を出資した場合、減価償却費は
120万円÷4年=30万円(1年あたり)
となり、毎年30万円を4年間、経費計上できる。競走馬は小口でも償却が可能なのだ。これは不動産の区分投資に似ているが、より少額からスタートできるのが特徴となっている。


(2026年6月号掲載)






