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賃貸経営地域活性

<<底地のギモンに答える>>

借地権を売りたい借地人 その時地主はどうする

代々土地を守ってきた地主の中には、底地の問題に悩む人も多い。底地に関係する問題は多岐にわたり、一度にすべてを網羅するのは難しい。そこで今回は「借地人が借地権を譲渡したい」と考えた場合に地主は何ができるのかという点に的を絞った。これまで底地の問題を数多く取り扱ってきた吉田修平弁護士に話を聞いた。

 
 

Q
 私はとある個人に土地を貸している地主です。借地人は、そこに自宅を建てています。近年借地人が亡くなり配偶者も特別養護老人ホームに入ったそうです。子どもたちも独立して暮らしているため、その自宅は現在空き家となっています。マンションデベロッパーがその家の子どもたちに連絡を取り「借地権を売ってもらいたい、6階建ての賃貸マンションを建てたい」と打診したようです。
 私は地主としてどう動けばいいのでしょうか。

 

解説

吉田修平法律事務所(東京都中央区)
吉田修平弁護士

 

 借地権の売却は、地主から見れば借主の変更だ。吉田弁護士は「地主側が相手の出方を予測し、自分の希望に沿った着地となるように事前に手を打つことが大切です」と話す。

 地主が借主の変更を受け入れてもいいと考えるなら、その変更に際しての「承諾料」を多く得ることを目指せるし、どうしても借主の変更が受け入れられないならば「介入権」の行使により借地権を地主が買い取ることができる。

 そもそも借地権は地主の承諾なく売ることはできない

 「もしも勝手に借地権を売られたとしても、地主は悲しむ必要はありません。実はものすごくラッキーなことだからです」(吉田弁護士)

 借地権は地主の承諾なく譲渡してはいけないという決まりがある。そのため、借地人が勝手に第三者に売却した場合は、借地契約を借地人側の違反により解除できる。つまり、地主はタダで借地権を取り戻せるのだ。

 ただし無断譲渡の事実を知ってから5年、またはその事実を知らなくとも無断譲渡から10年がたつと、解除権が時効で消滅してしまい行使できなくなる。またデベロッパーと何らかの書面を取り交わしたり、黙って地代を受け取ったりするといった行為は、地主が譲渡を追認したとされてしまうリスクがある。「無断譲渡に気付いたら、すぐに相手方に内容証明を送り、契約解除に向けて動くことが大切です」(吉田弁護士)

 地主が承諾しなくても裁判所が代諾許可を出せる

 借地人側も【1】のルールがあるため、地主に承諾を求めてくるケースが大多数だ。実は、ここでいくら地主側が借地権の譲渡承諾を拒んでも、結局は裁判所が地主に代わって譲渡の許可を出してしまう。これを代諾許可と呼ぶ。地主に不利となるおそれがない場合、借地人は裁判所に申し立て、代諾許可を得ることができるとされている。

「地主の“借主変更は認めたくない”という事情は、ほとんどの場合、地主に不利となるおそれがあるとは判定されません。結局、借地人が裁判所に申し立てれば、借地権の譲渡は避けられないのです」(吉田弁護士)

 ここから地主が取り得る戦法は大きく分けて2つだ。①借地権の譲渡を受け入れて承諾料を得る②介入権を使って自らが買い取る、である。

3-1 代諾許可で借主・用途などが変わる場合は承諾料を得よう

 借地人が譲渡承諾を求めた場合、裁判所は借地権の譲渡を含む3つの事柄について代諾許可を出すことになる。

 1つ目は、借地権の譲渡・転貸の許可だ。借地権を第三者に売却する際に必要となる。承諾料の目安は借地権価格の10%程度だという。

 2つ目は、増改築の許可。今回の場合は、借地上の一軒家を建て替えることになるので、それを行う際に必要となる。承諾料の目安は更地価格の3〜5%だ。

 3つ目は、借地条件(建物の種類、構造、規模または用途)の変更である。今回のケースでは、建物の利用目的が居宅から賃貸マンションに、構造も木造から鉄骨造などへ変更となる。承諾料の目安は更地価格の10%程度だ。

 「もし、借主が変わることが受け入れられるなら、地主側はそれなりの金銭を得ることができます。例えば、更地価格が1億円の土地であれば上記3つの承諾料をすべて合わせて2000万円ほどの承諾料を得られる可能性があります」(吉田弁護士)

 なお契約書に「地主の承諾」が必要であることを明記していない場合でも、一定の承諾料を得られる可能性が高い。無断譲渡と契約内容の変更は民法に規定があるため、そのことを禁止する特約がない場合も、地主に無断で行えば契約を解除される恐れがあるからだ。一方、借地上建物の増改築については、原則として借り手が自由に行うことができると考えられているため、契約書に増改築禁止の特約がなければ承諾料を得ることは難しい。

3-2 借主変更が受け入れられない・所有権にしたいなら介入権を使う

 借主変更そのものが受け入れ難ければ別の手段がある。地主には「介入権」がある。これは、借地人が借地権の譲渡の代諾許可を裁判所に申し立てた場合のみ行使できる地主の権利だ。デベロッパーなどを排して、地主が優先的に土地を買い戻すことができるというものである。介入権により借地権を買い取る場合の価格は裁判所が鑑定で決定するため、市場価格より低くなる傾向があるという。そもそも借地権の売却を認めたくない場合は、最有力の選択肢となるだろう。

 「借地人側が第三者に譲渡したいと申し出てきた場合、地主が拒否し続ければ相手は裁判所に代諾許可の申し立てをするはずです。そうすると、介入権の行使も視野に入ってくるでしょう。諸費用とのバランスにもなりますが、裁判所が介入する前の段階でデベロッパーと買い取り価格で争うよりも、安く買い取ることができる可能性があります」(吉田弁護士)

 ただし、介入権は地主側に資金がなければ行使できない。このことからも、地主が現金を持っておく必要性がわかる。

 契約書を作成していない場合に地主ができること

 書面による借地契約が結ばれていない場合や、契約内容に各種承諾料の条項が含まれていない場合に有効なのが「地代交渉」だ。地代交渉は契約書とは無関係なのだが、借地人との話し合いの機会になるからだ。

 「地代の増額を交渉した場合、喜んで応じる借地人はいないでしょう。交渉が決裂したとき、どうしても上げたければ裁判手続きによるしかないのですが、地主側も裁判までは望んでいないケースも多いのではないでしょうか。そんなときに『では地代はそのままでいいので、時代に合わせて契約書を作成しましょう』と、話をつなげるといいと思います」(吉田弁護士)

 今回は触れていない「更新料」の定めもこの流れで盛り込むといいのだという。

 承諾料に関する契約を結ぶことができれば、地主側のセーフティネットになる。先に「地主の承諾」を明記していない場合でも一定の承諾料を得られる可能性はあるが、例外は存在するので、それを契約書に盛り込むとより安心だ。

 例えば、個人の借主が株式会社をつくって、その株式会社に借地権を譲渡することを禁止する特約や、借主は株式会社Aのままだが、Aの株主がすべて変わることを禁止する特約などだ。こういった細かい取り決めを盛り込んだ契約書を作成するといいだろう。

まとめ

 「地主本人が底地の勉強に精を出せるかというと、そんな人はまれだと思います。法律も難解ですし、裁判所の代諾許可手続きは内容が非公開なので、ノウハウがわかりにくいのです。実際の交渉や長期的な作戦については、経験豊富な専門家を頼ってほしいと思います」(吉田弁護士)

 

One point

 借地人の建てた建物が老朽化などして契約更新の時期を迎えれば、地主の負担なしで借地権が地主の元に返ってくる可能性もでてくる。
 だが、だからといって「ただ待っている」だけの戦法をとると、今回のケースのように借地権を売却され、借主が変わるリスクがある。地主が事前に行うべきなのは以下の2つのことだ。

◆借地人との契約内容の確認
◆介入権の行使に備えた資金繰りの想定


(2026年7月号掲載)

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