<<私と不動産投資>>
金融のプロが見抜いた不動産投資の魅力
法人で新築、個人で築古、2軸で進めた資産形成
外資系金融企業に勤めながら、わずか6年ほどで建築中を含め100戸を超える賃貸物件を取得したのが森井和子オーナーだ。新卒から40歳まで金融業界の第一線を走りながら、現在は法人で新築アパート、個人で築古戸建てと、2つの軸で資産を積み上げている。金融商品のプロとして仕事をしてきた経験があるからこそ「不動産ほど安定してもうかる商品はない」と森井オーナーは言い切る。
森井和子オーナー(東京都練馬区)
- ▲2020年から新築アパート投資を始めた
40歳の転機 年金代わりに不動産を
森井オーナーが不動産投資の世界に足を踏み入れたのは2020年、ちょうど40歳を迎えた頃だった。きっかけは、自身の置かれた立場への危機感だ。
「外資系の証券会社は給料こそ高いものの、雇用不安が非常に大きい。長くは働けないので、年金代わりに不動産投資をしている人が多かったです」(森井オーナー、以下同)
身近に不動産で資産を築いてFIREを実現した先輩がいたことも、背中を押した。
当時、確かに高給を得ていた一方で、生活は決して派手ではなかったという。「外資系勤務というだけで派手に見られがちですが、実際は地味な暮らしで、きちんと貯蓄していました」と森井オーナーは話す。そして40歳の時点でまとまったキャッシュが手元につくれていたことが、その後の展開を大きく左右する。区分マンションから少しずつ始めるのではなく、いきなり一棟アパートを購入したのだ。「遠回りせず、資産拡大の一番の近道に進めたのは成功でした」と当時を振り返る。
同じ「型」を繰り返し 新築アパートを複数建築
20年に最初の物件として手がけたのは、千葉県船橋市にある京成電鉄本線東中山駅から徒歩8分の場所に建てた18戸の新築木造アパートだ。先輩が紹介してくれた仲介事業者の担当から、工務店、税理士、司法書士、そして金融機関まで一つのチームとして紹介してもらえたという。土地の仕入れから建築まで、信頼できる関係者の輪の中で一気通貫に進めることができた。
「仲介事業者が土地を見つけ、いつもの工務店が建て、銀行のお墨付きもある。このループがチーム内で完成していました」
価格は約1億8000万円で、土地取得費用込みで利回りは8・5%に上った。また、ほぼフルローンで30年超の長期融資を受けることができたうえ、その金利は0・4%と破格の条件だったという。
同物件については20年1月の竣工後、繁忙期の3月にすぐ満室となり、以降もほぼ満室を維持している。
「駅近で立地も良く、空室に悩んだことはほとんどありません」
ここから先は、成功した「型」の繰り返しだ。22年には千葉市に1棟12戸、24〜25年には千葉県松戸市に計3棟46戸を建設した。いずれも木造2階建て、部屋は22㎡の1Kという単身者向けで、施工会社や間取り・外観もほぼ同一にそろえた。

▲アパートの造りは全てそろえている
ここまで千葉県内に集中していた投資先だったが、この後は思わぬ縁で範囲が広がったという。SNSで知り合った女性投資家を通じて埼玉県に強い事業者を紹介され、埼玉県八潮市に15戸、川口市に12戸の新築に着手した。金融機関もこの2棟においては別の銀行に切り替えた。26~27年にこの2棟は順次竣工する予定だ。ここまでの新築アパートはすべて法人で保有し、7期目に入る現在まで1棟も売却していない。
「アパートの賃料収入だけで月400万円以上の現金が入ってきます。木造物件は、まさにキャッシュマシンだと思います」
個人では築古戸建て 現金購入で着実に
法人による新築と並行して、森井オーナーの個人名義で築古の戸建てをこつこつと買い進めている。実は森井オーナーは、現在もヘッドハンティングにより外資系会社の社長を務めるなど、専業で家主業に取り組んでいるわけではない。そのため、当時から自身の報酬に対する節税対策も重要だったのだ。
そこで、法定耐用年数が過ぎた戸建て物件を選び、減価償却を活用していくことに決めた。記念すべき1戸目は千葉県八千代市で、リフォーム代込みで830万円だった。その後も毎年1戸を目安に、総額1000万円以下の築古戸建てを現金で購入していき、現在は千葉県内に9戸の戸建てを保有している。
「年に1戸を目安に現金で買っているのは、節税が目的です」
例外もある。出張先だった香川県でも戸建てを先述の9戸とは別で3戸取得している点だ。いずれも100万円台のいわゆる「ボロ物件」で、リフォーム代込みでも1戸あたり200万円ほど。それでいて利回りは20%を超える。
- ▲節税のために築古戸建ても購入している
- ▲年間1戸を目安に戸建てを購入してきた
金融のプロが見た 不動産という「王道」
森井オーナーの投資方針は、証券会社時代の経験に深く根差している。当時担当していたのは「長者番付」の上位に名を連ねるような富裕層たちだった。
「皆さん、仕組み債や馬、ゴルフ場など、さまざまな投資をしています。でも、不動産は必ず『根雪』として持っているのです」
土台に不動産を据え、そのうえでほかの投資を積み上げる。富裕層に共通するこの姿勢を、間近で見てきた。
投資信託や仕組み債を数多く販売してきた立場だからこそ、見えるものもある。
「正直なところ、ほかのアセットで安定的に勝ち続けるのは難しい。これほど安定的にもうかる資産は、不動産以外にありません」
日本の低金利という環境を最大限に生かせば、そこには明確な裁定機会が生まれるとも話す。金融のプロとしてあまたの投資商品を見てきた森井オーナーが、最終的にたどり着いた結論が、不動産という「王道」だった。
木造から次のフェーズへ RC造を検討
順調に資産の拡大を続けてきた森井オーナーだが、今は大きな転換点に立っている。木造に偏りすぎたことで、複数の金融機関から資産構成の見直しを促されているのだ。
「銀行の評価を上げるためには、RC造をポートフォリオに組み込むことが欠かせません。一度木造を売却して、資産を組み換える必要があると考えています」
とはいえ、長年かけて築いた木造への愛着も深い。「金の卵を産んでくれるガチョウのような、可愛い木造ちゃんたちを手放さなければならないのはちょっと嫌なのです」と複雑な胸の内を明かす。それでも視線の先には、次のステージがはっきりと見えている。借りるだけ借りて満足するのではなく、物件を売買しながら規模を拡大させていく段階へと変化しようとしているのだ。
「リタイアするために買ったのに、買うためにリタイアできなくなってしまいました」と逆転現象を笑いながらも、その表情に後悔はない。「もう、お金を増やすゲームではないのです。規模を大きくしていくゲームに入ってしまいました」と、第2フェーズの過渡期を、森井オーナーは心から楽しんでいる。
(2026年8月号掲載)






