<<駐車場経営の盲点>> 第3回
収益モデルや運営方法が進化し、利用者が求めるものも変化する駐車場。月極に加えて時間貸しが普及し、無人化やキャッシュレス化、カメラの導入やデータ活用も進んでいる。地主・家主が選べる手段が増え、持つべき判断軸が広がった。今回はその変化を整理したい。
駐車場経営はどう進化してきたのか
―選択肢が増え、オーナーの判断軸が広がった
月極に時間貸しが加わる
土地を区画し、車を止めてもらうという駐車場経営の基本形に近いのは、月極駐車場である。住宅地などで継続利用する契約者を募り、毎月一定額の賃料を受け取る。仕組みがわかりやすく、稼働が安定すれば収入の見通しも立てやすい。土地の形をあまり変えずに始められ、将来の建築や売却にも対応しやすいことから、現在も有力な土地活用の1つだ。
そこに加わったのが、短時間需要を取り込むコインパーキングである。駅周辺や商業地では、同じ車室を1人に長期間貸すのではなく、複数の利用者に時間単位で使ってもらうことで収益を生み出せる。駐車場経営に「回転」という考え方が加わり、オーナーが見るべき項目も、月額賃料や契約台数だけでなく、時間帯別の需要、料金設定、周辺競合へと広がった。

無人運営が広がり、管理項目も変化した
大切なのは、月極よりコインパーキングが進んでいるということではない。住宅地で長期利用の需要が高ければ月極が適し、短時間利用が多い立地ならコインパーキングが力を発揮する。駐車場経営の進化とは、1つの方式への集約ではなく、土地や目的に応じて使い分けられる選択肢が増えたことなのである。(図1参照)

運営品質を重視する時代
時間貸しの普及とともに、発券機、精算機、ゲート、ロック板などを用いた無人運営が広がった。人が常駐しなくても入出庫や料金の受け取りを管理できるようになり、運営効率は大幅に高まった。一方で、設備が増えれば、故障対応、保守費用、利用方法の案内といった管理項目も生まれる。オーナーにとっては、設備を置くことそのものよりも、安定して運営できるのかを見る必要が出てきた。
運営形態も多様になっている。事業者による一括借り上げ、運営委託、自主管理など、手離れの良さと収益変動のどちらを重視するかで適した形は異なる。賃料や収益分配だけでなく、契約期間、解約条件、設備費や撤去費の負担、運営状況の報告内容まで確認することが重要になった。
近年は、キャッシュレス決済やオンライン手続きに加え、カメラで車両情報や入出庫状況を把握する方式など、利用実態をデータとして捉える手段も増えている。ただし、技術を使うこと自体が目的ではない。利用者にとってわかりやすく、オーナーにとって管理しやすく、トラブルを抑えられることこそ、本来の評価軸になる。
同じ技術でも、駐車場の用途によって効果は異なる。月極なら契約管理の効率化、コインパーキングなら料金設定や稼働状況の把握、賃貸住宅の付帯駐車場なら入居者の使いやすさ、店舗や施設の来客用駐車場なら本体施設との連携が重要になってくる。新しい仕組みを導入するかどうかは、その駐車場が担う役割に照らして判断すべきである。
駐車場の目的を定める
駐車場経営が進化するにつれ、オーナーの判断軸も変わってきた。以前は、何台分を確保できるか、いくらで貸せるか、どの設備を置くかが中心だった。今はそれに加え、誰にどう使ってもらうのか、どの需要を取り込むのか、利用者にとって使いやすいか、管理負荷は適切か、本体不動産にどのような効果をもたらすかまで考える必要がある。(図2参照)

特に付帯駐車場では、駐車料金収入だけを見ても価値を正しく測れないことがある。賃貸住宅なら入居率や入居者満足、店舗やクリニックなら来店・来院のしやすさ、複合施設なら施設全体の利用動線に影響する。駐車場単体の収支に加え、本体不動産への波及効果をどう評価するかが重要になっている。
選択肢が増えたことで、駐車場経営が自動的に簡単になったとはいえないだろう。むしろ、方式や契約条件を比較し、自分の土地に合うものを見極める必要性は高まっている。
駐車場経営の進化は、古い方式から新しい方式へ乗り換えるという単純な話ではない。月極、コインパーキング、各種の付帯駐車場がそれぞれの役割を持ち、運営手段も多様化したということだ。地主・家主に求められるのは、流行の設備を選ぶことではなく、自分の土地や建物で何を実現したいのかを定め、その目的に合った方式と運営を選ぶことである。
選択肢が増えた今だからこそ、目的、立地、利用者、運営品質、本体不動産との関係を一体で考えることが、駐車場の価値を引き出す出発点になる。
ピットデザイン(東京都千代田区)
岡田 英明 社長
東京大学工学部卒業。交通工学を学び、リクルート、ザイマックスグループ、レーサムの経営を経て現職。交通と不動産のプロパティマネジメントの双方にまたがる知見を基盤に、駐車場運営の高度化、来館導線設計、施設収益向上、管理品質向上に取り組んでいる。
(2026年10月号掲載)






