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空きビル再生し宿泊事業展開
既存ストックから新たな収益
北辰不動産
建築費の高騰が続く中、既存建物を生かした不動産活用が選択肢の1つとなっている。北辰不動産(東京都港区)は、空きビルを宿泊施設へ転用するコンバージョン事業を展開。宿泊施設ブランド「COCOSHUKU」を東京都内の4カ所で運営し、インバウンド(訪日外国人)の宿泊需要を取り込む。建物を壊さず活用することで工事費を抑え、短期間での事業化を実現。新築とコンバージョンを案件ごとに使い分けながら、既存不動産の価値向上と新たな収益源の創出を図っている。

▲「COCOSHUKU赤坂 Premium」のダイニングキッチン
東京都内で4施設を運営
既存の空きビルを宿泊施設へ転用するコンバージョン事業を展開しているのが北辰不動産だ。
同社は中古ビルを活用したCOCOSHUKUを開発し、不動産の新たな価値創出に取り組む。コンセプトは「つどう・こもる・くらす」。“自由気ままなプライベートホテル”を掲げ、インバウンドの家族やグループ旅行客を主なターゲットとしている。
客室は30~40㎡程度、4~5人で利用できる広さを確保し、キッチンや調理器具、食器類を標準装備。連泊にも対応できるようにすることで、一般的なホテルとの差別化を図っている。小林憲一取締役は「暮らすように滞在できる空間を意識している」と話す。宿泊客からも、広い客室やキッチン付きの利便性に対する評価は高いという。

▲新宿御苑にもほど近い「COCOSHUKU新宿花園」
コンバージョンを行う際には、主要駅や観光地へのアクセスなど立地条件はもちろんのこと、客室レイアウトや設備、運営効率まで総合的に判断し、ホテルとしての競争力を高めている。利用者はインバウンドが中心で、多くが家族やグループでの宿泊だ。平均宿泊日数は約3泊。稼働率は約80%を維持し、客室平均単価(ADR)は1室あたり3万~4万円台となっている。
現在は東京の新宿、浅草、赤坂、中野で4施設を運営。このうち赤坂を除く3施設は既存ビルを改修したコンバージョン案件である。
運営面では、ICT(情報通信技術)を活用したスマートチェックインシステムを導入し、宿泊者の利便性と運営効率を両立している。またOTA(オンライン専門旅行会社)による集客やAIを活用したレベニューマネジメントによって、稼働率と収益性の向上にも取り組んでいる。

▲「COCOSHUKU浅草蔵前」の外観
効果的な活用方法を選定
1964年創業の同社は、東京都内を中心に商業ビルやオフィスビルの賃貸事業を展開してきた。その後、中古ビルのバリューアップや投資用賃貸マンション開発へと事業領域を広げる中で、新たな収益源として2018年に宿泊事業へ参入した。
参入の背景には、インバウンド需要の拡大だけでなく、既存ストックをどう生かすかという問題意識があった。空室率の高いビルがあっても、建て替えには時間もコストもかかる。そこで同社は、宿泊施設へのコンバージョンによって建物を活用し、新たな収益を生み出すモデルを構築した。
小林取締役は「工事費が高騰する中、新築だけが不動産活用の選択肢ではない。案件ごとに最も価値を高められる手法を選択しているが、既存ストックを活用したコンバージョンは、有力な選択肢の一つだと考えている」と話す。
今後は東京都台東区で2施設の開業を予定しており、1施設はコンバージョンで26年12月上旬、もう1施設は新築で整備を進める。「新築が最適な案件もあれば、既存建物を生かしたほうが価値を高められる案件もある。その物件にとって効果的な活用方法を選びながら展開していく」(小林取締役)。不動産会社として培ってきた知見を生かしながら、市場ニーズに応じた不動産活用を追求していく考えだ。
(2026年11月号掲載)






