「建てる」のではなく「生かす」 ―MADARA

賃貸経営リフォーム・リノベーション

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「建てる」のではなく「生かす」 既存ストックで事業化支援

新たな役割を付与

 リノベーション設計を手がけるMADARA(横浜市)は「『建てる』のではなく『生かす』」をコンセプトに、住宅や宿泊施設、店舗、オフィスなど幅広い既存ストックの再生を通じて、不動産オーナーの資産価値向上を支援している。

MADARA 高瀬友基代表


 老朽化した建物や空き家を壊して建て替えるのではなく、新たな価値を与えて収益を生み出す不動産に再生する。

 鹿児島県南大隅町で手がけた、空き家を宿泊施設へコンバージョンした案件は、その1つだ。人口減少が進み、公共交通機関も少ない地域で、築約40年、延べ床面積約100㎡の戸建てを一棟貸しの宿泊施設として再生した。

 計画の背景には、人口減少が続く同町を「何とか盛り上げたい」という自治体や地域事業者の思いがあった。改修では畳敷きだった空間を板張りへ変更し、建物の中心には、いろりを新設。高瀬友基代表は「『いろりを囲み、人と人との絆が深まる空間』をコンセプトに据え、地域住民同士の交流やイベント利用にも対応できる空間とした」と話す。地元産杉を用いた浮造りフローリングや、畑に臨む円形デッキも採り入れ、その土地ならではの自然や暮らしを体感できる設計にした。改修費約1000万円で、8人まで宿泊できる施設へ生まれ変わった。


 インバウンド(訪日外国人)需要だけでなく、都市部へ移り住んだ人が家族と帰省する際の滞在拠点という需要にも着目した。地域の歴史や暮らしを感じられる空間を整えることで「また帰ってきたい」と思ってもらえる宿を目指したという。地域の文脈や建物の背景を設計へ反映させることが、ほかにはない施設づくりにつながっている。

 都市部でも、既存ストックを新たな役割へ転換する取り組みを進めている。横浜市では、マンション1階で空室となった薬局跡を、カフェ、ギャラリー、シェアキッチンを備えた地域住民の交流を促す場所へとリノベーション。オーナーの意向を受け、カフェ利用者だけでなく、アーティストによる展示やイベント、飲食店開業を目指す人のチャレンジの場としても機能する空間とした。空室対策にとどまらず、人が集まり、新たなコミュニティーを育む拠点へと生まれ変わらせた好例だ。

▲薬局として使われていた空間を改修した横浜市の物件。シェアキッチンやカフェ&バー、ショップ、アートギャラリーなどの用途で使われている

 

体験価値を創出

 こうした設計の背景にあるのが、同社独自の設計プロセスである。高瀬代表は、空間づくりの際に「目的」「マーケティング」「ブランディング」の順で検討することを重視する。具体的には、オーナーが何を実現したいのかを整理し、次に地域特性や需要を分析してターゲットを設定。そのターゲットが求める体験価値を建物へ落とし込むという考え方だ。

 「デザインがいいから稼げる不動産になるわけではない。ターゲットに喜ばれる空間だから成果が出る」(高瀬代表)。誰に、どんな価値を提供する空間なのかを明確にすることで、選ばれる施設づくりへとつなげている。

 高瀬代表は建築設計事務所やリノベ会社で経験を積み、2018年にMADARAを設立。当初は新築設計を志向していたものの、既存建物がリノベによって大きく価値を高める姿を数多く見たことで考え方が変わり、現在は「建てない建築士」と称して活動する。

 住宅が余る時代だからこそ、「建てる」のではなく「生かす」ことに建築の役割があると考え、既存ストックの活用に軸足を置いてきた。古い建物が持つ素材や意匠をあえて残すことで、新築にはない唯一無二の空間を生み出せることもリノベの魅力となっている。

 近年は、戸建て住宅や別荘を宿泊施設へ転換する相談が増えているという。宿泊施設は賃貸住宅より高い収益性が期待できるケースも多く、投資回収年数まで考慮した事業計画をオーナーと共に検討していく。

 

\Column/

収益性見据え用途転換も提案

 東京・新小岩では、築40年を超える戸建て住宅を宿泊施設にコンバージョンした事例がある。
 「オーナーが江戸時代から農家を営んできた家系であるという強みと、日本らしい体験を求めるインバウンドのニーズを掛け合わせて『農風景を感じる一棟貸し宿』というコンセプトにした」(高瀬代表)。太陽や山並み、農作物、森や風、田んぼなど、農風景のイメージをデザインに採り入れた。同施設の内装工事など開業にかかった投資額は約3000万円。2025年6月から26年5月までの1年間で、稼働率は約90%に達し、年間約330泊の利用があった。1泊あたりの平均単価は3万~7万円で推移している。
 「賃貸にする場合も宿にする場合も、改修費が大きく変わらないケースはある。同じ投資をするのであれば、より収益性が期待できる宿泊用途が選択肢になる」(高瀬代表)

 

(2026年10月号掲載)

 

 

 

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