【特集】入居者動向と人気設備から見る 2024年の賃貸住宅④

賃貸経営トレンド

外国人

コロナ前の水準にまで上向く
新規入国者は増え続ける見込み

 「22年10月に入国者数の上限が撤廃されてから、就労や就学目的の新規入国数が急増しています。当社の外国人専門の家賃債務保証の新規契約が22年は年間3万6000件でしたが、23年は5万件となる見通しです」

 こうコメントするのは、外国人支援事業を展開するグローバルトラストネットワークス(東京都豊島区)の後藤裕幸社長だ。賃貸仲介に関する問い合わせも増えていて、22年は約5000件の問い合わせ数だったが、23年は1万4000件近くを見込んでおり、2.6倍の増加だ。

 後藤社長は「留学生が多いですが、技能実習生や高度外国人材といった就労者も増えています。技能実習生は介護や飲食、宿泊事業からのニーズが高く、高度人材はITエンジニアを望む企業が多いです」と話す。

 これまで技能実習生は外国人労働者の約5分の1を占めていたが、日本に滞在できる期間は最長5年と決まっていた。しかし、23年6月の閣議決定で、在留期間に上限のない「特定技能2号」の対象分野が大幅に広がり、5年以上働き続けられる道が広がった。

 さらに技能実習生の待遇は、転職が可能になるなど今後も改善が見込まれ(*23年10月18日の外国人労働者のあり方を議論する政府の有識者会議より)、増加の見込みが高い。

2023年のトレンド
1.技能実習生、高度外国人材が急増
2.介護、飲食、宿泊業の人手不足が激しく、需要が高い
3.技能実習生の単身入居が増加

 

部屋探しのニーズは 就労状況で二分する傾向

 技能実習生と高度人材では、部屋のニーズが異なる。

 「技能実習生はベトナムやミャンマー、スリランカからが多く、築年数が20~30年でも気にならず、湯船に漬かる習慣がないので、トイレとバス、洗面から成る3点ユニットでも気にしません。設備に対するこだわりが少なく、立地は勤務先まで自転車で通うことができるエリアかが、部屋探しの判断基準です」(後藤社長)

 また、コロナ前は2~3人で借りるケースが目立ったが、23年は月収の相場も上がってきたことから一人で借りるケースが主流だという。受け入れ先として、東京の企業ではビザが発給されにくいため、関西や九州で特定技能外国人が増えている。

 一方の高度人材は、インドや中国、韓国からが多く、年収1000万円を超える人もいるため、賃料が10万〜20万円代のLDKクラスが人気だという。

 「長期滞在する留学生や外国人就労者が増えることで、新たな需要が生まれています。日本にいる家族や友人に会うために訪日する人も増加しており、そうした人は1カ月以上滞在するケースが多い。ホテルだと費用がかさむので、マンスリーマンションやシェアハウス、民泊の需要が高まっていくと考えています」(後藤社長)

▲グローバルトラストネットワークスが開発の、ChatGPTを活用した外国人向けの生活相談アプリ「GTNアプリ」。背景のキャラクターは4種から選択できる

 

認知度を上げて、集客アップを目指す

不動産会社のSNS活用法

インスタグラムで若者世代に訴求

 年間賃貸仲介件数558件の絹川商事(石川県野々市市)は、インスタグラムの活用を強化している。きっかけは、22年の学生向け賃貸仲介事業が伸び悩んだことだ。

 インスタグラムの投稿に関わる人員は主に3人。この3人が、同社の管理物件2803戸から投稿に使用する物件を選定。画像や動画の投稿内容については、それぞれ対象となる物件選びや画角などを検討するためのロケハン、撮影、編集を担当者が行う。編集は、長いシーンのカット、テキストの挿入、アフレコを入れるといった三つの工程を踏む。投稿頻度は週3回。この取り組みを開始した当時は200人未満だったフォロワーは、約1年間で倍の500人を突破した。フォロワーの属性も一般ユーザーの比率が高まってきたという。

 不動産部賃貸仲介課の前田桃香氏は「来店時の顧客との会話で、当社のインスタグラムが話題に上るときがあります。SNSでの発信が顧客に届き、来店の後押しになっているという成果を感じています」と話す。

▲おすすめの物件情報のほか、独自に取材した飲食店の情報もアップしている

企業のブランディングとしても効果あり

 事故物件の再生事業「成仏不動産」を行うマークス不動産(東京都中央区)では、インスタグラムで同社が事故物件に関わる中で感じたことや、実際に起きた顧客との話などを中心に投稿。一方、「TikTok(ティックトック)」は社風や社長の人柄が伝わるよう、社長へ一問一答を展開している。ともに人材の採用を目的に運用を開始し、会社のブランディングに活用しているが、運用開始後、物件の売買契約の成約につながった事例もある。

 ティックトックはアカウント開設後、約3カ月で2件の物件成約に至った。ティックトックから問い合わせをした50代の男性は、家族が自殺した物件をマークス不動産に売却。SNSの運用を担当する経営企画部室広報課の藤本理沙氏は「『SNSを見て、物件を大切に扱ってくれるだろうと感じた』と言ってもらえました。SNSによるブランディング効果を感じます」と話す。

▲やさしい印象のイラストで、取り扱っている物件のエピソードを紹介しているインスタグラム

(2024年1月号掲載)

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