【特集】仲介・管理会社から見た賃貸住宅マーケットの動向

賃貸経営トレンド

オンライン上での内見予約が浸透
仲介会社の紹介意欲にも影響する

  大手不動産ファンドやJ–REIT(ジェイリート)の空室対策コンサルティングに携わるリーシング・マネジメント・コンサルティング(東京都港区)の齊藤晃一社長は「コロナ下で仲介会社と管理会社の間でのIT化が急速に進み、ウェブでの内見予約や申し込みが浸透しました」と話す。

 同社では毎年、賃貸不動産仲介会社に調査を行っており、19年当時はウェブ上での内見予約や申し込みは、仲介会社から不評だった。管理会社ごとに基本情報を登録し、パスワードを設定するなどの手間が面倒で、従来の紙によるファクス対応を希望する仲介会社が多かった。

 しかし、コロナ下で首都圏の管理会社の多くは、テレワークや時短営業を始めたため、仲介会社もオンライン対応を行うようになった。

 「23年6月に行った調査では、仲介会社が管理会社に望むことで『内見予約をWEB化してほしい』が1位になりました(図A)。前年の調査から2倍近い上昇なので、WEB化が急速に浸透したことがうかがえます」(齊藤社長)

平均の案内件数は2~3件が76%を占める

同社が仲介会社に対して毎年行っている調査において、平均の案内物件数は、1位が3物件で55.4%、2位が2物件で20.7%、3位が4物件で12.1%だった。1位の3物件は、この10年変わらない結果だという。

 仲介会社の営業現場において、案内する物件は次のように決まることが多い。ポータルサイトで詳しく調べて来店した人に、目当ての物件を案内することはもちろんだが、その物件を既に申し込みが入っている場合は、担当者が同じような条件の物件を提案する。その際、AD(広告料)がついている物件を優先的に勧めるという流れだ。こうした現場の動きにもWEB化の影響が出ていると、齊藤社長は話す。

「前述のとおり仲介会社が管理会社に望むことの調査で『内見予約をWEB化してほしい』が1位になりましたが、特筆すべきは、2位の『ADを増やしてほしい』を上回っていることです。ADよりも、業務効率を上げられるオンライン対応のニーズが高いという結果。言い換えれば、オンライン対応していない管理会社の物件は、仲介会社の紹介意欲を減退させます。内見に至る2~4物件に選ばれるために、オーナーは委託先の管理会社のオンライン対応の有無を確認したほうがいいでしょう」(齊藤社長)

 また、電子契約を行う仲介会社も増えている。22年の調査で、電子契約を行ったことがある人は47.9%だったが、今年は57.1%と半数を超えた。

「電子契約は入居者と仲介・管理会社、オーナーと全員にメリットがあるので、より一層進んでいくでしょう。現状では東京都心よりも、地方の管理会社のほうが電子契約に積極的です」(齊藤社長)

※図A、Bともにリーシング・マネジメント・コンサルティング提供資料をもとに地主と家主で作成

テレワーク需要の定着と都心回帰の動き

 コロナ下を経て1都3県を中心に定着したといえるのが、テレワーク需要だ。部屋数の多さを求めるニーズが依然高まっており、予算内で希望がかなう物件を探して、都心部からエリアを広げて探す傾向にあるという。

「23年の繁忙期に東京でテレワークを想定して部屋探しをした人の割合が3割以上と回答した仲介会社は、45.3%という調査結果でした(図B)。テレワークスペースを求めるニーズは継続していくと思われます。狭くても部屋数の多性メリットとなり、家賃のコストパフォーマンスが高い40㎡台の2LDKは、今後もニーズの高さが続くでしょう」(齊藤社長)

 その一方で、勤務先に近い物件を望むニーズが回復し、コロナ前の状況に戻りつつある。

 「職場に近い駅が好まれるようになったと回答する仲介会社は45%で、「遠い駅でも気にしなくなったと」回答した15.6%を大きく上回りました。都心主要5区において、世帯数よりも人口の増加が多いというデータが出ていますので、単身者の都心回帰の動きも注目すべきです」(齊藤社長)

2023年のトレンド
1.仲介会社が望むニーズで、内見予約のオンライン対応が1位
2.電子契約の割合が57%と半数を超える伸び率
3.1都3県では狭くても部屋数の多さを求める、テレワーク需要が続く

 

齊藤社長’s VOICE
関西地方特有の動きは、テレワーク需要が低いこと。テレワークを想定した部屋探しの割合は「1割未満」「1~2割程度」が合計で75%。需要の高い設備においても「無料のインターネット環境」「通信速度の速いインターネット環境」のニーズが首都圏ほど高くありません。

(2024年1月号掲載)

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