<新たな環境型投資手法>
系統用蓄電池に特化して地主と投資家をつなぐ
持続可能なエネルギーインフラとして今注目を集めているのが、系統用蓄電池だ。太陽光発電事業においてメガソーラーによる環境問題などが表面化する中、新たな投資事業として参入企業が増えている。リフォーム会社大手のライフワンは、リフォーム事業で構築した工事事業者とのネットワークを生かし、土地所有者と系統用蓄電池事業者をつなぐ事業を2025年から始めた。
ライフワン(東京都新宿区)
坂本貴志社長

用地取得が肝
系統用蓄電池とは、電力ネットワークに直接接続する蓄電池のことだ。電力市場で電気が余る時間帯に安い電力を蓄電し、需要が高まり価格が上がる時間帯に売電して収益を得るというモデルで、新たな電力ビジネスとして注目を集めている。投資額は5億円以上と大きいものの、太陽光発電投資よりも短期間で投資回収が見込める点が魅力だ。短時間の充放電で電力網の安定化に貢献することから、国も持続可能なエネルギーインフラの構築を目的として、蓄電所開設に補助金を設けている。
ライフワンはこれまで、給湯器やガスコンロなど設備交換に特化したリフォームのインターネット通販サイトを展開してきたが、この系統用蓄電池事業に注目し、土地保有者と投資家をつなぐための運営を始めた。
「系統用蓄電池事業を行ううえで何より重要なのは、連系工事に必要な土地の確保です」と同社の坂本貴志社長は話す。連系工事とは、蓄電所を地域の送配電網に接続するために行う工事だ。
蓄電池事業者にとって、用地取得は非常に難しく、参入障壁が高い。蓄電池が「危険物」と見なされるため、用地と民家との間に一定の距離が必要となるうえに、蓄電池の冷却ファンが発生させる騒音への規制など法令上の制約がある。土地面積については300坪以上が対象だ。
電力会社の送電線の空き容量の確保から始めて、土地探し、連系申請、権利取得、土地購入、工事、接続を経てマーケットで運用可能になるまで、約2年はかかるという。
系統用蓄電池事業に適した土地取得が難しい市場において、同社は用地調達力とこれまでリフォーム事業で培ってきた事業基盤を強みに展開する。
用地調達力については、大企業から取得するためのネットワークを構築している。同社は150億円ほどの売り上げがあるリフォーム会社大手。商社や東京ガス、東芝といった大企業と長年取引を続けており、アライアンスを組むことで、投資家が安心して投資できる仕組みづくりを進めている。

例えば、2月にENEOSから10件の土地を系統用蓄電池用地として取得した。ENEOSは電気自動車の増加に伴いガソリンスタンドが減少傾向にある。そんな状況下で遊休地を保有しているENEOSから用地取得に至った。同社は社会動向や経済状況を分析してこうした土地を保有する企業にアプローチし、全国各地で系統用蓄電池用地の取得および開発を積極的に推進している。
同時に工事事業者とのネットワークがあることも同社の強みだ。系統用蓄電池の設置には、騒音対策や消防法上の基準など、専門的なハードルが複数存在する。同社は元々、電気・水道・ガスといったインフラ的な部分を担う工事も行っており、リフォーム事業で培った全国的なネットワークとノウハウがある。
減価償却資産として有効
系統用蓄電池事業は、2026年度から一括償却が可能になった。具体的には、法人化している中小企業なら5億円以上を投資した場合に、経済産業省から認定されれば適用となる。この一括償却により、オペレーティングリースと同様の効果が得られる利益の繰り延べが可能となり、高い収益を上げている企業にとって大きなメリットとなる。
中古市場の将来性もある。一括償却後、蓄電池の運用が安定すれば、太陽光と同様に中古市場が形成される可能性が高い。投資家は売却したいタイミングで売却できるようになる。これは従来のオペレーティングリース商品とは異なり、資産運用としても大きなメリットが得られるだろう。またオペレーティングリースとして見た場合でも、初年度から10%以上の利回りが期待できる商品であることから注目されているという。
サイトで市場活性化図る
同社は25年から系統用蓄電池への投資、売買に特化した専門マーケットサイト「系統用蓄電池.com」を運営している。
物件選定から円滑な取引環境の提供、運用サポートまで、専門サイトならではのノウハウで投資家、および新規事業としての参入を検討している企業の資産形成をバックアップするものだ。特に選定が難しい系統用蓄電池に適した土地については、情報収集が鍵となる。同サイトは同社独自の協力会社ネットワークを最大限に活用し、全国から系統連系の見込みのある物件を厳選して掲載している。

ライフワンが運営する系統用蓄電池.comのサイト
物件情報を掲載するだけでなく、系統用蓄電池に関する最新の市場動向、法制度情報および投資判断に役立つ専門的な情報を継続的に発信することで市場活性化を図ることを目的とする。
「当社は用地取得から販売、土地の売り手と投資家をつなぐマッチングプラットフォームの運営までを垂直統合的に手がけています。これは単に事業を運営するだけでなく、将来的な中古蓄電池マーケットの創出までを見据えており、市場全体をけん引するプラットフォームとして、機能強化を目指しています」(坂本社長)
同社は25年12月に発電事業者として申請し、受理された。自らが発電事業者として蓄電池を運用する知見を生かし、メディア運営を通じた市場情報の提供を行うことで、業界全体の透明性向上と市場の活性化に注力する。
(2026年8月号掲載)






