最も大切にしたいこと

コラム永井ゆかりの刮目相待

連載第107回 相続で大切にしたいこと

家族の幸せが最優先

 地主・家主の中には相続で大変な思いをした人が多い。いかにして家の資産を残すか、当主はそのことを常に考えている。資産を残すためには税金を減らす必要があることから、相続対策というと最初に相続税対策を考える人が大半だろう。

 だが、「税金対策から始めるとうまくいかないのです。親・子・孫の3世代が幸せになる未来を考えて対策をすることが重要です」と相続コンサルティングを数多く手がけるシナジープラスの亀島淳一社長は話す。

 亀島社長はこれまで証券会社、建築会社、不動産会社に勤め、いろいろな立場で相続によって家族が不幸せになるケースを見てきた。父親が子どもたちに平等に分けたいという思いで残した遺言書どおりに分割したことで、かえって不公平な状態になったり。納税資金を捻出するために、売却しやすい不動産から手放し、納税後に残ったのは収益性、資産性の低い不動産だったり。

 資産を減らさないことを最大の目的とすると、相続税を納めることはできても、その後、家族がもめて絶縁状態になったり、所有しているだけで経済的にも精神的にも負担が大きいものしか残らなかったりする。

 資産を残すために努力してきたことが、相続後、家族に喜ばれない、つまり家族が幸せになれない不動産を引き継ぐことになる。そんな結果になってしまう対策に意味があるだろうか。

いい形で引き継ぐ

 では、どのようにすれば家族が相続後に幸せになれるのか。資産をすべて洗い出し、仕分けをする。仕分け後に、家族が今どのような状況であるのかを確認し、納税資金を確保しながらどの財産を誰に引き継ぐのが家族の幸せにつながるのかを考えることが重要だという。

 ポイントは早めに動き出すこと。現状の資産の再構築をする期間が長いほうが、いろいろな選択肢を持ちながら対策を講じることができるからだ。
一方で、家を代々守ってきた地主を取材して思うのは、家族が幸せになる相続が、すなわち皆が平等に資産を引き継ぐことと捉える必要はないということだ。

 家族にはそれぞれの役割がある。家を守っていく後継者が多くの資産、とりわけ地主であれば不動産を受け継ぐことで、維持し発展させやすくなる。そのことを子どもに幼少期からいかに伝えて認識させていくかが、重要になってくる。

 家を守り続けている地主の共通点は、家として大切にしていることが明確であることだ。家の資産を守ることができるのであれば、その地域に固執するのではなく、ほかの地域の不動産を購入したり、金融資産を増やす施策を講じたりすることで可能性は高くなる。

 「家を守り続ける」ことは非常に難しい。だからこそ、家族内でのコミュニケーションは重要であり、そのことが幸せな相続につながるのだと思う。

永井ゆかり

永井ゆかり

Profile:東京都生まれ。日本女子大学卒業後、「亀岡大郎取材班グループ」に入社。リフォーム業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌などの記者を経て、2003年1月「週刊全国賃貸住宅新聞」の編集デスク就任。翌年取締役に就任。現在「地主と家主」編集長。著書に「生涯現役で稼ぐ!サラリーマン家主入門」(プレジデント社)がある。

(2025年 8月号掲載)

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