<<長期活用という選択肢>>
建築費高騰の今だからこそ建物を長く生かす
築年数が古くなると、建て替えを検討する不動産オーナーは少なくないだろう。だが、建築費が上昇している中、安易に建て替えを選択すると、収支が厳しくなるケースが出てきている。管理会社の市萬の西島昭社長は「古くなったら、建て替えだけでなく、修繕・改良して長期活用するという選択肢を伝えたい」と、不動産オーナーに提案している。
「建築費の高騰を受けて、不動産オーナーは所有物件をいかに長く生かすかを考える必要が出てきました」と西島社長は話す。市萬が管理する賃貸物件は約2300戸。築20年を超える建物が74%を占める中、入居率は14年間95%超を誇る。そんな市萬では、RC造なら築80年間の長期活用を前提とした運営管理を重視している。「建て替えた場合と、修繕・改良しつつ長期活用した場合、それぞれの税引き後の手取り金額を比較できるようにシミュレーションすることで、オーナーが判断しやすくなるのです」(西島社長)
近年、築古物件を長期活用したいというオーナーは増えてきた。ただ、修繕費は融資の対象になりにくいうえ、改修が必ず満室につながるとはいえないのも現実だ。
「長期活用できるのか、その場合どのように建物を整備していけばいいのかなどを相談できる先はまだ少ないでしょう。だからこそ当社では経験や勘に頼らず、シミュレーションに基づいた具体的な数値を示すことで長期活用という選択肢を提案しています」(西島社長)
同社に管理委託された時点で空室が目立ち始めていた築30年ほどの賃貸マンションのケースでは、まずエントランスと外構などを修繕・リノベーションし印象の改善を図った。さらに原状回復工事のタイミングでリノベも進めたことで、賃料を11万円から15万円へと上げることができた。建て替えを考えていたオーナーにとっては、同社に管理を委託したことで長期活用という選択肢が増えたのだ。

After
外構や敷地内の植栽、建物の外観に統一感を持たせた。外からはわかりにくい室内の大幅リフォームよりも、少ない費用で道行く人や内見者へ与える印象が大幅に変化した
同社のこの取り組みは、建物の長期活用の可能性を後押しする事業として国に評価され、5月の「全国不動産コンサルティングフォーラム2026」において国土交通省より不動産・建設経済局長表彰「優秀賞」を受賞している。
西島社長は3年前に出版した著書「〝築20年〟からのアパート・マンション経営〝成功〟の秘訣!~建築費高騰時代! 建て替えないで収益を増やす~」の改訂新版を8月に出版した。
「長期活用のメリットとノウハウを公開しているこの本が、所有不動産の活用方法や次世代への引き継ぎ方について親子で考えるきっかけになればうれしいですね」(西島社長)
市萬(東京都世田谷区)
西島昭社長
西島社長が独自の管理術を実例と共にわかりやすく解説している。改定新版は8月に夢パブリッシングより出版
(2026年10月号掲載)






