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ホスピス / フレアスメディカルケアホーム
ホスピス主体に施設介護事業で急成長
マッサージ事業とのシナジーで売上3倍、営業利益20倍へ
フレアス(東京都品川区) 澤登拓社長
“看取り難民”増加で 30倍の市場ニーズ
訪問マッサージチェーンをFC展開して急成長を遂げてきたフレアス(東京都品川区)が、さらなる大成長に向けて大きな変革期を迎えている。
現在、同社の全売上高のうち8割近くをマッサージ事業が占めており、施設系介護サービスの割合は15%だ。しかし、3年後に施設系が63%と、マッサージ事業の34%を大きく上回る計画で、全体業績もここ数年で様変わりする見込みだ。2024年3月期の売上高57億円は、3年後の2027年3月期には、一気に3倍の166億円に。営業利益は約1億円から20倍の20億円への急拡大を計画している。この大改革を牽引するのが「ホスピス」事業だ。同社のホスピスは現在、5カ所で開設済みだ。2023年3月に開設した三重県四日市市の1号店を皮切りに、同年9月に静岡市駿河区、12月に神奈川県相模原市、そして今年5月に東京都板橋区、6月に神奈川県横浜市と続々オープンしている。
同社は2019年に上場したが、上場のわずか1年後に新型コロナウイルスの流行に見舞われ、主力の訪問マッサージ事業はその影響を大きく受けた。コロナ禍中にも施術を求める高齢者からのニーズはあったものの、感染対策のために利用者の自宅や高齢者施設への出入りが難しくなってしまったという。 結局、コロナ初年度の2021年3月期は赤字を計上せざるを得なかった。以後、その建て直しをしつつ代わりに何かできることを探していたところ、行くべき道がハッキリと見えてきたという。澤登拓社長は施設系介護事業に参入した経緯を次のように語る。
「マッサージはすごく喜ばれるやりがいのある仕事なんです。寝返りを打てなかった方がマッサージを受けたことでできるようになったとか、ポータブルトイレが使えるようになっておむつを使わずに済むようになったとか。でも、束の間、病院に入院して最期亡くなったらしいよと…。最後まで一緒にいたいなと思ったんです。最後の最後まで。そこで、施設介護をやろうと考えました」
ホスピスは、一般的に余命半年以内の人が対象となり、積極的な治療はせず、代わりに痛みや苦痛を和らげるケアを受けながら人生の終末期を過ごすための施設だ。
超高齢化社会の進展で、病院のベッド数は不足している。団塊世代が後期高齢者の年齢に差し掛かっていることに加え、75歳以上の80%が病院で亡くなるという前提で考えると、2025年以降は終末期患者を看取るためのベッド数が大幅に不足する。2030年予想では47万人の患者を病院で看取ることができなくなると言われている。 今後は、終末期を過ごす場所の選択肢の一つとして、ホスピスのニーズが急速に高まっていくことが予想される。
国内にあるホスピスは、現状で200施設に満たないと言う。1施設当たりの入居可能数が50人と推計しても1万人前後しか利用できない計算だ。こうしたことから、今後ホスピス市場には30倍のニーズが見込めるという。
同社は2025年3月時点でホスピスの運営拠点数10拠点を目指す。さらに、中期経営計画では、2027年3月末時点で全国26拠点、居室数1006室を見込んでいるという。しかも現時点で運営されているホスピスの規模は、入居数30人を下回る規模だが、今後は入居可能数40人以上を前提に大型化していく予定だという。
▲マッサージ事業とのシナジーで「痛みの無いホスピス」を目指す
事業利益率は20%、 投資利回り5~8%
今後、同社は祖業である在宅マッサージと施設介護事業の両事業で、互いにシナジーを創出していく。
「ホスピスのビジネスモデルに当社のエッセンスを入れることで、我々にしかできない事業を作ろうと考えています。そのために、一番重要なのがマッサージです。年間約80万回の施術件数がある当社のマッサージ事業は、業界一だと自負していますし、実際に利用者満足度も高いです。利用者の方にとって、最後の最後まで自分らしく過ごせる居場所を作り出そうと考えています」(澤登社長)
同社のマッサージ事業の競争優位性は痛みの緩和だ。痛みの第一人者である東京大学医学部附属病院の住谷昌彦氏の協力のもと、マッサージによる疼痛ケアの研究を行っている。マッサージを組み合わせ、痛みの無いホスピスを作る方針だ。
近年はマンションやアパート以外の非住宅への投資を始める人が多く、特に社会貢献できる事業が注目を集めている。そのため、施設介護に対して前向きに捉えるオーナーは増えつつあるという。
「ダイレクトに社会貢献に繋がるのが、施設系へ投資するメリットの1つです。実は今回、静岡で建設していただいているオーナーは80代のご夫婦。『自分たちの土地でこうやって喜んでもらえる人たちがいるんだったら是非投資したい』と言ってくださいました」(澤登社長)
約30台分の駐車場スペースなども考慮に入れると、ホスピス1棟を開設するためには約400~600坪の土地が必要となる。48床タイプでホスピスを開業した場合の収支モデルは、月商が3600万円。利益率22%。これは、入居者1人あたりの売上と施設のベッド数の掛け合わせだ。ほかの介護施設と異なるのは、医療保険の割合が高いことで、収入の6割を占める。
オーナーからは土地を1平米約7万~7万5000円で借りる想定だ。建設費は大きさによるが、1施設あたり5億~7億円ほど必要になる。利回りは約5~8%で推移し、オーナーには30年間固定で家賃を支払う。
今後、需要増が予想されることで、より一層同社のホスピス事業には期待が高まりそうだ。 「当社のホスピス事業は、適正価格で良い場所にある物件を確保することや、人材を採用してどう教育、定着させていくかという事業のパターンがすでに固まりつつあり、今後はホスピス事業の取り組みが中心になるでしょう。ただ、ホスピスに注力すると言っても、祖業であるマッサージが中心であることは変わりません。マッサージ事業をおろそかにすることなくFCも直営も展開を進めていくつもりです」(澤登社長)
(2024年10月号掲載)
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