<<再エネのプレーヤー 新土地活用>>
開発、建築から電力取引まで自社で実施
一気通貫モデルで系統用蓄電所事業を展開
近年、国が再生可能エネルギーの比率を高める方針を掲げる中、電力を一時的にためて調整する系統用蓄電所が注目を集めている。東証グロース市場に上場するグリーンエナジー&カンパニーでは、2026年4月期の系統用蓄電所事業の実績が、自社所有分も含めて29件で、このうち完成・稼働は9件、建設工事進行中は20件だ。今後はさらに120カ所以上で新規開発が進行している。同社は用地開発から建設、運用管理までを一気通貫で行い、受注実績を伸ばしているという。

グリーンエナジー&カンパニー(徳島県松茂町)
鈴江崇文社長

自社で保有し検証後に販売
グリーンエナジー&カンパニーは、太陽光発電施設およびZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の販売を主力事業として成長してきた会社だ。26年4月期の業績は売上高184億円で前58%増と大きく伸ばしている。
同社が近年集中して展開しているのが、系統用蓄電所事業だ。

■ 系統用蓄電池の仕組み
26年4月期は5件を販売した。同社は市場の拡大を見据えて、24年に本事業を開始。現在主流のリチウムイオン型の蓄電池を使用した蓄電所を、いち早く展開してきた。29年4月期は売上高300億円を計画している。
鈴江崇文社長は「自分たちが投資家目線で本当に欲しい、所有したいと思えるもの以外は顧客に販売しないという経営思想があります」と話す。
系統用蓄電所事業における同社の特徴は主に2つある。自社検証と一気通貫体制だ。
1つ目の特徴の自社検証だが、同社は23年から新規事業開発部署で系統用蓄電所について、検証を開始。24年9月に系統用蓄電所運営会社を設立し、同月に稼働を開始して試験運用を実施した。
- 同社が運営する系統用蓄電所
「当社では創業以来、自社で保有し、テストして、確実に良いと判断したパッケージのみを顧客に引き渡すというプロセスで事業を展開してきました。系統用蓄電所についても同様のプロセスで行っており、他社ではあまり例のない信頼性を支える重要な要素だと思っています」(鈴江社長)
同社はすでに29件の受注を獲得し、5件を引き渡しているが、この実績は自社検証のプロセスを徹底した結果としての信頼の表れといえる。
肝はアグリゲーション
同社のもう1つの特徴が用地取得から運営までを手がける一気通貫体制だ。
系統用蓄電所の事業化には、多くのハードルが存在する。系統用蓄電池につなぐ電力系統の空き容量確保、ハザードリスクの回避、ファンの騒音を考慮した民家からの距離確保、約300坪の用地取得、設備の設計・建設、さらには充放電のテストなど、複雑なプロセスをすべてクリアしなければならない。
同社の強みは、これらの開発や建設だけでなく、運用において最難関である「アグリゲーション(電力の制御・取引)」までをすべて自社グループで完結できる、一気通貫の体制を整えていることにある。
市場では開発だけを行い、アグリゲーションは他社に外注する事業者が大半を占めており、すべてを自社で行う企業はほとんどない。
系統用蓄電所ビジネスにおいて収益性を大きく左右するのが、アグリゲーションだ。系統用蓄電所は収益用不動産の投資と比較して高利回りが得やすい。注意すべきは、収益性は電気を「安い時に買い、高い時に売る」アグリゲーションの精度、つまりアグリゲーターの運用能力に依存することになる点だ。
同社が自社でアグリゲーションを行うようになったのは26年からで、それまでは他社に外注していた。だが、外注する事業者によって、収益性に差があることから、グループ内に専門スタッフを採用して研究・分析。自社で収益性を生み出す方法を模索してきたという。
そこで、同社が取り組んでいるのが、AIを活用した自動アグリゲーションシステムの内製化だ。現在、市場に登録しているアグリゲーション事業者は増えているものの、実質的な運用実績が ある会社はまだ少ないという。さらに、既存の事業者には手動で市場入札を行っている事業者も少なくない。激しい価格変動に追従できず、最適な価格で取引できないため収益を大きく落としていることもあるという。

■ グリーンエナジー&カンパニーの系統用蓄電所事業の展開状況
同社では、26年3月に稼働を開始した京都の自社保有型案件で自動アグリゲーションシステムの運用実績を重ねている。これにより、少人数かつ超低コストで最大の取引効果を生み出す仕組みを実証している。
このAIシステムによる自動化は、小スペースから設置できる「低圧系統用蓄電所事業」において大きな強みになるという。低圧系統用蓄電所は2000万円前後の投資規模かつ、駐車場2台ほどのスペースで稼働可能。4月の制度改正により、運用できるようになった新しいタイプの系統用蓄電所だ。
この低圧の小規模蓄電所は、1拠点ずつ手動で運用していてはコスト倒れしてしまう。だが、同社ではこのAIシステムの採用により効率的に運用できる体制をつくることで、今後広がっていく低圧系統用蓄電所についても積極的に販売していく計画だ。
賃貸経営と共通点がある
「蓄電所も、建てるものが違うだけで、本質は不動産経営に通じるものがある」と話す鈴江社長は、もともと戸建て賃貸などの不動産事業を展開してきた。そこで培った投資家目線と経営力を蓄電所事業にそのまま移植しているという。
「不動産において『入居付け』が最も重要であるのと同様に、蓄電所では『アグリゲーションによる収益化』が成否を分けるのです」。こう話す鈴江社長は、特に低圧系統用蓄電所については、地方の地主やアパートオーナーが、人口減少による空室リスクへの対策として、所有地を活用した新たな事業として注目している。
同社はこの一気通貫モデルを生かし、将来の「中古蓄電所の市場」の開拓をも見据えているという。「今後、アグリゲーションの運用能力が不十分で、収益が低迷する他社製の蓄電所が市場に増えていくと予想されます。当社は、そうしたパフォーマンスの低い蓄電所を買い取り、自社のAIアグリゲーションシステムを適用することで、収益を向上させて再生するビジネスを視野に入れているのです」(鈴江社長)。
同社では、東証上場企業としての高い与信力と健全な経営管理体制が、高圧系統用蓄電所に6億円以上という多額の投資を行うオーナーや、次の有望な投資先を探す地方の優良企業に対し、安心感を与えているという。
今後、企業の信用力に加えて、用地確保、建設、メンテナンスに限らず、いち早くアグリゲーションに着手したことでさらなる成長につながるだろう。
(2026年11月号掲載)









