病に倒れたことで進んだ賃貸事業

賃貸経営不動産投資

※この記事は地主と家主(旧家主と地主)2023年12月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

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キーワードは「安定」  病に倒れたことで進んだ賃貸事業

 大阪府のほかに、奈良県や兵庫県の郊外に12棟99戸、戸建て3戸を所有する片岡智典オーナー(大阪府羽曳野市)が初めて投資について学んだのは、中学生の頃だった。銀行員だった母親の教育方針で、当時から株式投資を開始していた。

片岡智典オーナー(大阪府羽曳野市)

 株式投資は続けていたが、仕組みを知っているからこそ安定しないこともわかっていた。そこで、安定収入を得るためにと興味を持ったのが不動産投資だ。2008年、初めての不動産投資として区分マンションを1戸購入した。

 同年、「関西大家の会」を主宰する松田英明オーナー(大阪府箕面市)のブログを読みコンタクトを取ったのをきっかけに、松田オーナーに教えを請うことになった。その後、10年に2棟のファミリー向け物件を購入。少し早いかと思われたが、月の手残りを70万円程度確保したことで、翌11年に専業家主となった。

長期入居につなげる工夫 設備の充実と共用部の清掃

 脱サラを急いだのには理由がある。パニック障害を発症し、サラリーマンとして勤めることに限界を感じていたからだ。体調が悪いときは起き上がることもままならないため、賃貸経営においては、できるだけ長く入居してもらえる物件づくりを念頭に置くという。

 例えば、共用部の清掃だ。最初に買ったアパートは、共用部が混沌(こんとん)としていた。いつから誰が置いているのかわからない自転車の山のほか、野良猫がすみ着いている古いソファが放置されていた。ひどい管理状態ではあったものの、満室での購入だった。

 それならば、入居者満足度を上げていこうと考え、共用部のごみを撤去したうえで、テレビモニター付きインターホンを追加で導入するなど、設備の充実を図った。

 「23年に入ってから購入した古い物件も、インターネットを無料にしたり宅配ボックスを新たに追加したりするなど、既存の入居者の満足度を上げる工夫をしました」と片岡オーナーは話す。それでいて家賃は大きく上げず、あくまでも周辺相場と同じ程度だという。

▲木目調パネルや白を基調にした部屋づくりも、多くの人が飽きずに長く入居するために必要だという

 「賃料設定を頑張って高くするというのではなく、この設備でこの家賃ならば、という『割安感』を出しています」と話すが、その理由は、入居者がほかの物件を探してまで移ろうとしないようにし、長期入居者を獲得しようと考えるからだ。

 そのため、物件購入の際には自分の努力の余地がある物件を選ぶ。つまり、共用部の清掃や追加設備の導入で入居者満足度を上げることができる、工夫のしがいがある物件ということだ。

 追加投資をしても利回りが15%ほどになる築古の格安物件を購入し、家賃に対して満足度の高い物件に変えていく。

 片岡オーナーにとって賃貸経営とは、病気と向かい合いながらも「安定」を得るもの。経済的、精神的な安定のためには、長期入居者を獲得できる物件をつくっていくことが肝要なのだ。

(2026年7月公開)

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