本人に寄り添う新しい「補助」 地主・家主への影響は?

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<<変わる成年後見制度>>

本人に寄り添う新しい「補助」 地主・家主への影響は?

成年後見制度の改正案について、法制審議会の審議を経て、6月17日に国会でも可決・成立しました。今まで利用しづらかった後見制度が大きく変わる可能性があります。変更後の制度が、アパート経営をしている人にとって利用しやすくなるのか、問題点は改善されるのか、現在わかっている情報を基に掘り下げて伝えます。

司法書士法人ソレイユ(東京都中央区)
友田純平司法書士

「代理型」から「よりそい型」へ

 現行の後見制度(以下、現制度)では、後見人が本人の意向に沿った対応をしてくれない、本人の声を聞かずに勝手に手続きを進めてしまうといった不満が多くありました。こうした背景から、新制度では後見人の権限を縮小する方向です。

 具体的には、現制度の後見、保佐、補助の3類型が「補助」(以下、新補助)に一本化されます。現制度の補助は、認知症などの程度が軽い人向けの制度ですが、それを踏襲し、新補助でも最初から代理権は付与されず、同意権と取消権のみを行使できる仕組みが基本となります。

 これにより、現制度では後見人単独で金融機関や役所などで手続きできていたものが、新制度では、原則として本人と補助人が一緒に行動する形に変わります。そして、補助人が契約内容を確認した後に本人が契約する「よりそい型」に変わる見込みです。

必要に応じて権限を付与

 新補助では、どの手続きに同意権・取消権を付与するかは、本人の意向を確認のうえ、オーダーメードで権限をトッピングします。

 また、「よりそい型」だけでは十分に対応できない場合や本人が自分で出向けない場合には、代理権をトッピングする方式で追加すれば、補助人だけで手続きができるようになります。ただし、代理権の付与には対象行為の内容と必要性を裁判所に示して個別に審判を受けることが必要です。不動産経営においては判断を迫られる場面が多い中で、包括的な代理権がないため注意が必要です。

重度の人向けに「特定補助」

重度認知症や重度知的障害の人がだまされて契約を結び損失を被ることを防ぐために「特定補助」という制度が新設されました。これは新補助にトッピングしますが、新補助との違いは「包括的な取消権」があることです。

 新補助の同意権・取消権では、不動産の売買、銀行手続きなど具体的に指定する必要がありますが、保護の必要性が高い場合は、特定補助をトッピングすれば自動的に包括的な取消権が付与されます。利用には原則として医師の鑑定が必要です。

 一方で、特定補助でも〝代理権は当然には付与されず、家庭裁判所による付与の審判が対象行為ごとに必要〟なので、この点は新補助と同じです。

本人の意向を重視する新補助

 新補助人は、重度認知症などの場合を含め、必ず本人の意向を確認する行動をしなければいけません。意向を確認したが、どうしても本人の意向が確認できなかった場合に限り、意向確認を得ずに進めることができます。また以前は事実上の終身制だった後見制度も見直され、家庭裁判所が「新補助の継続は不要」と判断した場合には終了できるようになります。

 しかし、意向確認行動の義務化について重度障害者の家族からは「家族でも本人の意向確認が難しいのに、どのようにするのか?」という疑問の声もあり、実務上の課題が残っています。

 さらに家庭裁判所が関わる制度であるため、審判が下りるまでに時間を要する可能性があります。「よりそい型」になることで、これまで以上に諸手続きに時間がかかることが懸念されています。それに加えて新補助人は業務量が増える予想ですが、その分の報酬がどうなるかはまだわからない状況です。

地主・家主こそ「家族信託」を

 軽度認知症などでだまされることを防ぎたい人には新補助で足りるかもしれません。
しかし、アパートや駐車場などの収益不動産を守りたい地主・家主にとっては、これだけでは不十分です。重度認知症になってからでは、不動産の賃貸・売却、賃料口座の取引、大規模修繕といった判断に裁判所や新補助人の関与が必要となり、経営の意思決定が大幅に遅れるリスクがあります。空室が増えても新たな契約が進まない、修繕工事が止まるなどの深刻な事態にもなりかねません。

 そこで、検討してもらいたいのが「家族信託」です。家族信託とは、本人の判断能力がしっかりしている間に信頼できる親族らに財産管理を任せる仕組みです。裁判所が関与せずに不動産の管理・処分ができるため、スピーディーかつ柔軟な経営判断を行うことが可能です。不動産経営についても家族の意思でスムーズに進められます。

 また新制度では任意後見と新補助との併用が可能になり、家族信託と組み合わせることでより手厚い備えが実現します。

 新制度の施行は2028年以降の見込みです。制度改正を待つだけではなく、今のうちから家族信託を含めた事前対策を専門家に相談し、大切な不動産経営と家族を守る備えを始めてください。

(2026年9月号掲載)

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