家業に新しい柱をつくり、タフな経営を目指す

賃貸経営ストーリー

※この記事は地主と家主(旧家主と地主)2023年11月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

<<地主の挑戦>>

東京都中野区鷺宮で、地主として江戸時代から続く横山家。同家が経営する横山保全(東京都中野区)の代表取締役を務める横山忠功氏は、兄と共に家業に入り、シェアハウスや民泊施設など新規事業を展開している。「従来の賃貸事業以外の収入源をつくって、会社をタフな経営にしたい」と横山氏は話す。

横山保全(東京都中野区)
横山忠功代表取締役

就活前にあった家業の説明

 地主として不動産賃貸事業を代々営んでいる横山家。西武鉄道新宿線沿いにアパート・マンションを39棟263戸所有するほか、シェアハウス12棟116室、民泊施設4棟を運営している。

 シェアハウスや民泊事業を担当する横山氏は、2011年に25歳で家業に入った。父と4歳上の兄も同法人で働く中で、新規事業を開拓している。横山氏は「所有物件のアパートやマンションは、父や兄が運営しているため私が家業に入ったとき、仕事がほとんどありませんでした。新しい事業に取り組むことで、自分の仕事をつくり、会社としての可能性も提示しています」と話す。

 横山氏が家業に入るきっかけとなったのは、大学3年生のとき。就職活動が始まる前に、両親から家業についての説明があった。「20歳になったことで、決算書を見ながら経営や財務の状況を聞きました。就活に備えて『会社四季報』を眺めていた時期なので、決算書の金額を見て、会社の規模が想像でき、心配になりました。経営が傾いたとき、自分が違う仕事に就いていたら立て直すことができるのだろうかと」(横山氏)

 それまでは家業に興味がなく、大学卒業後は一般企業への就職を考えていた。しかし、将来、不動産事業と向き合うことになるなら、早いほうがいいという考えに変わった。ただし、社会人経験は必要だと考え、卒業後はIT企業に就職し、金融関係のシステムエンジニアとして勤務。3年後に退職し、家業に入った。

賃貸仲介会社でアルバイト

 いざ家業に入るも、所有物件は委託管理で、横山氏の仕事は少なく時間がたくさんあった。そこで、不動産に関する知識を広く得ようと、15前後の家主の会へ参加。20代半ばという若さのため、話が合う人は少なかったが、サラリーマン家主たちとの交流が勉強になったという。融資の受け方や金利の考え方、事業計画書の作り方など、経営者として知りたい情報を得ることができた。

 また、勉強会に参加する中で、知らない不動産業務が多くあることに気が付いた。例えば、自主管理と委託管理について。同法人では委託管理をしていたため、オーナーが自主管理できることを、当初知らなった。

 そこで埼玉県蕨市にある賃貸仲介会社へアルバイトとして入社。週3回、フルタイムで半年間勤務し、不動産会社側から見たオーナーの立場や、入居者募集の流れを体得することができたという。

 そうして17年に始めたのが、シェアハウス事業だ。シェアハウスを所有するサラリーマン投資家から話を聞き、収益性の高さから興味を持ち、物件を探していた。購入したのは東京都江戸川区小岩にある築40年の一戸建てで、価格は1000万円。

▲東京都練馬区豊玉仲にあるシェアハウス「仲な家」。築40年ほどの一軒家をリノベした

 クラウドソーシングを活用してデザイナーを起用し、リノベーションを行った。全5室の女性専用で、主な入居者である20〜30代の女性が好むように、内装デザインは「デンマーク・シック」をテーマにした。共用リビングの壁の色をサーモンピンクに塗り、チョークアートを描いた。募集を開始すると、すぐに満室になった。

 運営は、横山氏とシェアハウスの管理経験があるスタッフを雇用し、自主管理とした。ハウスルールの徹底と清掃に力を入れて、コミュニティーが乱れないように気を付けた。「キッチンのガスコンロ脇に、調味料を出しっ放しにするのも駄目です。一回一回、片付ける。小さな乱れが大きな乱れを呼びますから」(横山氏)

▲民泊「シェアベース池袋」。アウトドアやキャンプをテーマにした室内

収入源を増やし、タフな経営に

 シェアハウスは20年までに、6棟95室となった。利回りは20〜30%と高く、事業収入の2割を占めるまでに成長。22年末から再び力を入れ始めた。「東京で仕事を探す若者や、日本語を学ぶために来日する留学生など、マンスリーマンションよりコストパフォーマンスのいいシェアハウスへの需要を感じています」(横山氏)

 最近は、入居者への対応に「Chat(チャット)GPT」を活用している。元々、入居者からの問い合わせに「LINE」のチャットボットで返答していたが、定型の返答しかできず、スタッフが対応するケースも多かった。そこで、ChatGPTとLINEを連携し自動返答するように覚えさせた。横山氏はシステムエンジニアとして働いた経験から、デジタルツールに明るく、業務効率化のために積極的に活用している。

 23年から始めた民泊施設の運営も、訪日観光客数の回復による需要の高さを受けてのこと。北池袋、新大久保、椎名町において築古戸建てをリノベし、順々にオープンしている。民泊で適用される条例は、区によって異なるため、各所に確認を取るのが大変だという。シェアハウス事業の経験を生かし、民泊も自社運営している。

 家業の将来性を案じて働き始めた横山氏にとって、新規事業により収入源を増やすことは、リスクヘッジになるという考えもある。「2030年までに会社を複数の柱を持つ、タフな構造にすることを目指しています」(横山氏)

▲23年7月に始動した空き家再生事業「ココミンカ」のHP。空き家の活用に困っている所有者から借り上げてリノベし、貸し出していく

(2026年9月公開)

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