馬こそ推せる! 不動産にない魅力はこれだ!

コラム馬主道

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第7回 馬こそ推せる!不動産にない魅力はこれだ!

馬は心のバランスを保つ最高のパートナー
人生を豊かにする「感動の資産」

 私は長年、不動産経営をしてきた。不動産は非常に優れた資産だと思っているし、実際に私の人生を大きく変えてくれた事業でもある。そんな中で今、あえて言いたいのは「馬には不動産にない魅力がある」ということだ。不動産経営を長くやってきたからこそ、馬の面白さが際立って見えるのだ。

 不動産は、基本的に安定した事業である。家賃収入が入り、長期的に資産を形成していく。空室や修繕、金利変動などのリスクはあるが、それも比較的予測可能な世界だ。

 一方で、馬は違う。生き物であり、感情があり、毎日状態が変わる。そして何より夢がある。

筆者が主催する不動産セミナーの受講生が馬主デビュー。愛馬が1勝を挙げた

レース2分で10年分の達成感

 自分の馬がパドックを悠然と歩いた後、ゲートに入り、スタートを切る。あの瞬間の緊張感と高揚感は、不動産取引におけるそれとは全く別物だ。ゴール前で繰り広げられる数cm差の攻防に、スタンドがどよめく。勝った瞬間には、厩舎スタッフ、騎手、牧場関係者、馬主みんなで喜びを分かち合う。

 私自身、名古屋競馬で激戦を制する瞬間は、何度経験しても体が震えるほどうれしい。ゴール前の実況に馬名が上がり、場内がざわめき、自分も「走れ!」と叫んでいる。気付けば周りの馬主仲間と肩を組んでいたこともある。競馬場でしか生まれない、独特の一体感である。これを不動産で例えるなら、満室稼働が10年続いたような達成感であろうか。それが、わずか2分足らずで味わえるのだ。「これはずるい」と思うくらい、濃い体験である。

 そして、馬が勝てば賞金も入る。不動産の売却益のように派手ではないが、積み重なればバカにできない金額となる。「趣味と実益を兼ねる」という言葉があるが、馬主はまさにそれを地でいく。何より、この興奮を共有できる仲間が増えていくことは大きな財産だ。

不動産×馬で補助金通りやすく

 馬には夢だけではなく、事業としての可能性も多くある。まず注目したいのが、補助金との親和性だ。馬に関わる事業は、地域振興、観光、福祉、教育と相性がいい。近年は、地方創生の取り組みや体験型コンテンツ、福祉連携に対する補助制度が増えており、特に人口減少が進む地方では、馬が地域資源として注目を集めている。

 馬を中心とした牧場見学や、乗馬体験、馬との触れ合いイベントなど、馬には人を呼び込む力がある。「そこに人が訪れる理由」が必要な地方においては、馬は強い武器になる。もし地方に不動産物件を持っているなら、馬との掛け合わせで補助金申請のネタにすることができるのだ。

 例えば、廃校を活用した乗馬教室や、古民家を改修した滞在型牧場体験など、不動産単独では採択されにくい補助金でも、馬と組み合わせることで通りやすくなるケースがある。これは不動産オーナーにこそ気付いてほしい視点だ。

馬から派生する事業は多い

 また「人の馬を預かる」という事業の可能性も面白い。馬の預かりに関しては、育成預託や、休養・養老牧場、乗用馬転用、馬輸送など、多岐にわたる関連産業が存在する。不動産でいうところの、賃貸管理やリフォーム、民泊運営などに近いイメージだ。馬を所有して終わりではなく、そこから複数の収益構造をつくれるのが馬事業の醍醐味だいごみである。1頭の馬が、引退後も違う形で収益を生み続けるモデルは、長期保有で価値を引き出す不動産経営の発想とよく似ている。

 私は不動産と馬の組み合わせに大きな可能性を感じている。「廃校×馬」「古民家宿×乗馬体験」「地方の空き家×馬コミュニティー」など。不動産だけでも、馬だけでもない。両方を組み合わせることで、今までにない新しい価値が生まれると実感している。

 実際に、私はそれを意識しながら活動しているが、よく「なぜそんな発想ができるのか」と聞かれる。その答えは簡単で、どちらも「人との縁」でできている事業だからだ。不動産で培った土地活用の視点と、馬で培ったコミュニティーの力を掛け合わせると、やれることは山ほどあると思っている。

とにかく馬は「かわいい」

 ここまで事業の話をしてきたが、最終的に一番伝えたいのは、そういった事業論ではない。馬は「かわいい」のだ。これに尽きる。

 経営というものは、数字だけを追い続けると疲れてしまう。利回りに、空室率、税金、融資、修繕…。どれも重要だが、そればかりでは心がすり減ることもある。

 そうした日々の中で、馬を見ていると、毎日表情が変わり、性格も、1頭1頭全く異なることがわかる。頑張って走る姿に思わず声が出るし、調子が悪ければ心配になり、勝てば本当にうれしい。

「Rakuten競馬」の「サラブレッドオークション」で購入した「ベストバラディア」(3歳牝馬)

 私は調教師や厩務員から馬の近況を聞くたびに、経営の疲れがふっと消える感覚がある。「今日は元気でしたよ」の一言が、どれほど気持ちをリセットさせてくれるか。不動産の入居者から「ありがとう」と言われる喜びとは、また違う種類のうれしさだ。馬は、経営者の心のバランスを保つ、最高のパートナーかもしれない。

 私はよく「夢と数字は両立できる」と話しているが、馬はまさにそれを象徴する存在だ。もちろん、けがや引退はあるし、思うように走らないこともある。それでも多くの人が馬に魅了され続けるのは、数字では説明できない価値があるからだと思う。不動産が「安定の資産」なら、馬は「感動の資産」だ。私は今後も、この2つを組み合わせながら、新しい資産形成の在り方を探っていきたいと思っている。

 不動産経営をしている人ほど、一度は馬の世界に触れてみてほしい。そこには、資産形成だけではない「人生そのものを豊かにする体験」が待っている。

 次回は「馬と社会貢献」をテーマに、引退馬支援や地方創生、雇用創出などについて解説したい。

仲尾正人氏(三重県桑名市)
2015年に地方競馬馬主、23年にJRA馬主に登録。25年より一般社団法人愛知県馬主協会会長。通算100勝・累計賞金1億1000万円を達成する。生産・育成・厩舎と広く連携し、不動産経営と馬主事業を融合させた新しい資産形成モデルを提唱する。


(2026年9月号掲載)

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