【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善6月号掲載

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税金を抑える ~経費の勘違い! 経費になる、ならないは一概にはいえない~

 キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。

 前回に続き、③の税金を抑える方法を解説していきます。

「この領収書は経費になりますか」と聞かれることが多いのですが、これは難しい質問です。例えば、冷蔵庫を買った場合、それが自宅で使うものであれば、経費にはなりません。事業には関係がないためです。しかし、買った冷蔵庫を賃貸物件に置いて、家具付きの部屋として貸し出すのであれば、経費になります。

 経費になる、ならないは、一概にはいえません。それは「この領収書だからいい」ということではないのです。

証拠不提出で認められず

 平成30年2月1日裁決事例を見てみましょう。不動産所得における経費として計上されていた車両費(自動車税、ガソリン代、自動車保険料、減価償却費)約70万円と、交際費約10万円が否認されました。

 その理由は、「自動車の具体的な使用方法や頻度を明らかにする証拠や、交際費が不動産貸付事業に直接関連している支出であることを明らかにする証拠を提出せず、客観的に見て、業務と直接関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であると認めることができない」ということでした。

 車両費約70万円、交際費約10万円は、そこまで大きい金額ではありません。これくらいの金額の経費を計上している家主は多いと思います。しかし、この事例では否認されました。これは裁決書に「明らかにする証拠を提出せず」とあるように、事業で必要であったことを明らかにできるかどうかによって、判断が分かれるのです。次に、具体例で考えてみましょう。

裏付けとなる記録を残す

●家主仲間との懇親会費用

 セミナー後の懇親会の参加費は、不動産経営との結び付きが強いものです。しかし、賃貸経営の延長上にあれば何でも経費になる、ということでもありません。例えば、セミナーで出会った家主仲間との飲食費は、場合によっては単なる友人との飲食と見られる可能性があります。

 この場合は、相手の名前やそのとき話した具体的な内容など、賃貸経営に「必要な」会合であったという記録を残しておくと、経費として認められる可能性が高くなるでしょう。

●物件調査費用

 物件購入のために、現地に行って視察したときの交通費や宿泊費などは経費になります。しかし、観光を兼ねた際に何でも経費にするというのは問題です。

 物件視察では、物件の写真や、不動産情報のチラシ、訪問した不動産会社の名刺などを保管し、視察した証拠を残しておくようにしましょう。視察レポートも書いてください。

 特に視察後に物件を購入しない場合、観光的な要素が強いのではないかと疑われます。その物件を購入しなかった理由をレポートの中に明記しておきましょう。また、観光を兼ねた場合は、旅行中の観光と視察の割合を出し、視察の割合の分の経費を計上するのがいいと考えます。

 経費になるかどうかの判断基準は「賃貸経営をしているが故にかかるものかどうか」です。そのため、金額の多寡ではなく、ストーリーと、その裏付けとなる証拠が大事なのです。

Knees bee(ニーズビー)税理士法人
(東京都千代田区)
解説 代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。 

(2024年6月号掲載)

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