住まいの提供で生活再建を後押し

賃貸経営入居者との関係づくり

<<入居者との思い出>> 第55回

住まいの提供で生活再建を後押し
自身の経験生かし家主として支援

 「今年の正月に『LINE』で『あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』というメッセージが届いたんです。誰だろうと思って見ると、Aさんでした。自主管理物件とはいえ、入居者から個人的に連絡が来ることはほとんどありません。驚きましたし、本当にうれしかったですね」。こう語るのは、Aさんが住む横浜市のアパートを運営する種村直美オーナーだ。

種村直美オーナー(東京都港区)


 Aさんと出会うきっかけは、生活保護受給希望者の入居をサポートする専門会社からの連絡だった。Aさんは当時30歳。それまでは住居を持たず、漫画喫茶などで寝泊まりをする生活を送っていた。

 Aさんとの面談は、種村オーナーの所有アパートで行われた。本来、家主の立ち会いは不要だったが「30代の女性」と聞き、どのような人物なのか気になったため、同席することにした。

 現れたAさんは、着の身着のままに近い状態で、荷物もほんのわずかだった。

 生活保護の受給が認められれば住まいを確保できる見通しだったが、それまでの一定期間は部屋をAさんに無償で貸す必要があった。そこで種村オーナーは、自身の所有アパートにAさんを案内した。

▲Aさんが住むアパート。築古物件だが水回りはしっかりとリフォームされ、女性も快適に暮らせる部屋になっている

 センスの良いステージングが施された部屋に一歩足を踏み入れると、Aさんは目を輝かせ「わぁ、こんな部屋に住んでいいんですか?」と、驚くほど喜んでいた。その姿を見て、種村オーナーは、自身が家庭の事情から両親に頼ることができない環境で育ったことを思い出した。

 「このテーブルも使う? カーテンは何色がいい?  必要なら用意するからね」。そう声をかけ、気づけば、昔の自分が〝誰かにしてほしかったこと〟を、自然とAさんにしていたという。

 その後Aさんは生活保護の受給を経て、正式な入居者となった。現在も種村オーナーのアパートで暮らしている。

 「18歳で家を出て、大学も奨学金で通っていたので、若い頃は経済的にギリギリの生活をしていました。自分を奮い立たせてその環境から抜け出しましたが、その強さがない人も大勢います。ですから、自分が欲しかった助けの手を、家主という仕事を通じて差し伸べたいと思っています」(種村オーナー)

[プロフィール]種村直美オーナー
東京都港区在住。個人事業者として13年活動する中で、輸出物販事業を拡大。2023年に不動産賃貸事業へ参入し、現在は12物件46戸を運営するとともに宅建事業も手がける。

(2026年8月号掲載)

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