遺言書作成前に提案 〜エンディングノートを活用〜
家主の場合、遺言書を書く前に「エンディングノート」を作成する方法もある。表1にあるとおり、エンディングノートには法的拘束力はない。そのため、いくら詳細にエンディングノートを記入しても、起こり得る相続のもめ事への対策にはならない。
だが、エンディングノートに「遺言書執筆前の棚卸し」そして「遺言書では伝え切れない財産に対する引き継ぎ事項」を記すことで、今後発生する相続への対策になるだろう。
まず、遺言書執筆前の棚卸し作業として記入したいのは、財産一覧だ。財産に関する項目は大まかに分けると以下のとおり。
・預貯金と銀行口座
・加入している保険
・有価証券、その他金融資産
・不動産
・借り入れ
家系図は相続税対策を考えるにあたって必要になってくる。一から家系図を作成するのは骨が折れる作業だが、一般的なエンディングノートではすでに作成された家系図に穴埋め形式で記入するだけだ。離婚歴がある場合はその旨も記入したい。相続人となる自分の子どもに、異母・異父きょうだいがいるときに遺産分割協議で悩む、あるいは争いを防ぐことができる。
次に、遺言書では伝え切れない財産に対する引き継ぎ事項がある。大きく分けて、
・遺産分割に関すること
・所有する不動産のこと
について考えてみたい。
遺産分割に関することは、相続について「感情面」の整理と相続人に対する指針と考えたい。自分がどうして、誰に賃貸経営を引き継いでもらいたいかの思いを記す。もちろん、遺留分に留意した相続対策を行うことが必要にはなる。だが「なぜそのような遺産分割になるのか」という思いを伝えることで、いざ相続が発生した際に「不公平なのではないか」という相続人の間の不信感を取り除く効果もある。
また所有する不動産について引き継いでおきたいことも「思い」として記すことができる。例えば、代々受け継がれてきた、ここだけは絶対に手放すべきでない土地に対する考え。もしくは、地元でない場所にある土地を取得することになったいきさつ。そのような土地に関する歴史を記しておくことが、相続人にとって土地の取捨選択をする際の指針になる。
そのほかにも、境界線でもめている隣家や長期間にわたって貸し宅地を提供している借地人との関係など、不動産に関わる人間関係についてをエンディングノートに残しておくという方法もとれる。「相続」を「争族」にしないために、経済面と感情面をエンディングノートを使って補うといいだろう。
【エンディングノートと遺言書の違い】
(2024年12月号掲載)
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【特集】相続トラブルを防ぐ 遺言書の基本④
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