【連載】認知症は怖くない!? 資産を守るためのキホン:7月号

相続相続手続き#相続#不動産#遺言#認知症

専門家が作る遺言能力鑑定書が有効

 不動産オーナーが認知症を発症すると、相続時に問題が発生するケースが珍しくありません。建物や土地などの資産を誰が引き継ぐのか。相続争いは、高齢化社会の到来で全国的に増加しています。

 相続争いが裁判に発展すると、遺言書作成時や任意後見契約締結時に「遺言能力」はあったのかということが争点になります。裁判では、どのようにして故人の遺言能力が判断されるのでしょうか。

訴訟で重視される項目

 遺言や任意後見契約には、自分がした行為の意味や結果を判断できる遺言能力が必要です。遺言能力の有無を判断する基準として、「総合的に見て、遺言の時点で遺言事項を判断する能力があったか否かによって判断すべき」(東京地裁・平成16年7月7日)という裁判例があります。具体的には以下のような項目を評価し、判断されます。
●精神医学的な評価
●遺言内容
●被相続人(遺言者)と相続人の人間関係
●遺言と同じ内容を記した別資料
 遺言者に遺言能力があったのかという判断には、医学的検査だけでなく、遺言内容や相続人との人間関係など社会常識的な点も考慮されます。また、遺言書と同じ内容が記載されている日記などの資料があれば、故人に遺言能力があった強い証拠になります。

専門医による遺言能力鑑定

■遺言能力鑑定書の例

 一般的に、裁判官が最も重視する項目は、精神医学的な評価です。具体的には、医師が作成した診断書、カルテ、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS─R)の点数、そして各種の画像検査などです。

 しかし、裁判官は医療においては素人です。これらの断片的な資料だけでは、故人に遺言能力があったのかどうかを正確に判断することはできません。そこで重要な判断材料となるのが、遺言能力の程度を医学的に精査する「遺言能力鑑定」です。認知症治療を専門とする脳神経科や精神科の医師が、カルテや画像検査などを分析して遺言能力鑑定書を作成します。

 経験豊富な認知症専門医が作成する遺言能力鑑定書は、裁判官の判断に大きな影響力を与えるケースが多いです。

メディカルコンサルティング(京都市)
濱口裕之代表医師兼CEO

[プロフィール]
1996年京都府立医科大学卒業。医師が代表を務める法律事務所向け医療顧問業としては業界最大手のメディカルコンサルティングにおいて、140人の各科専門医と年間1000例の事案に取り組んでいる。「日経メディカル」で「濱口裕之の『治療だけで終わらせない交通事故診療』」を連載中。相続関係では、資産家向けに遺言能力鑑定を提供している。

(2024年7月号掲載)

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