著者インタビュー:最小文化複合施設

賃貸経営リフォーム・リノベーション

最小文化複合施設

 ~たまたま住んだ一軒のアパートからはじまる、東京・谷中の物語

HAGISOが歩んだ10年から見る 建物再生のポイントと地域との関わり方

─HAGISOは、古い建物の再生や活用事業で有名ですね。

 1級建築士事務所であるHAGISO(ハギソウ)の出発点は、「萩荘」という賃貸住宅です。建築士事務所として、古い物件のリノベーションのほか、建て替えを含めた活用の提案、時には、再生した建物での事業展開も行っています。

─御社の10周年に合わせてこの本を出版しました。

 以前から「本を出したい」という考えがあり、準備をしてきました。萩荘のオーナーをはじめ多くの人々との出会いを経て、自分たちの事業を発展させ、地域の価値向上に努めてきました。この巡り合わせを含めた経緯は、時系列の物語風にまとめたほうが伝わりやすいと考え、この形で本にしました。

─インタビュー記事も多く掲載していますね。

 この10年間を振り返ると、人との出会いや関係がとても重要でした。そこで、キーパーソンたちへの取材を行い、インタビューや対談を掲載しています。

─地主・家主にはどのような視点で読んでほしいですか。

 建物から人とのつながりが生まれ、オーナー自身の人生も変わっていく。そこに興味を持ってほしいです。私たちの出発点である萩荘は、木造賃貸住宅から「最小文化複合施設 HAGISO」に生まれ変わりました。こうした変化は、オーナーにとって建物の価値を捉え直すことになります。

─建物活用のポイントは。

 無理をしないということが一番大切です。そして、オーナー自身がその場所に愛を持っていることも必要です。ただ流行に乗るのではなく、場所や建物の持つポテンシャルを踏まえ、その場所に「どうなってほしいのか」を探していきます。

─次の10年に向けた目標はありますか。

 この10年間は、無理に拡大することなく、小さなエリアで密度を濃く活動してきました。今後もこの方針を変えることなく、その土地や建物の面白さを掘り下げる仕事をしていきたいですね。
最小文化複合施設
たまたま住んだ一軒のアパートからはじまる、東京・谷中の物語

【著者プロフィール】
宮崎晃吉(みやざき・みつよし)

HAGISO代表取締役。建築家、1級建築士。群馬県前橋市生まれ。2008年東京藝術大学大学院修士課程修了。磯崎新アトリエでの活動を経て11年に独立。建築設計やプロデュースを行う。13年より、築古の建物をリノベーションした飲食店、宿泊施設を設計・運営している。

最小文化複合施設 ~たまたま住んだ一軒のアパートからはじまる、東京・谷中の物語
著者:宮崎晃吉・顧彬彬
出版社:真鶴出版
価格:3300円(税込み)

【概要】
東京・谷中を中心に活動する1級建築士事務所HAGISO(ハギソウ・東京都台東区)の10年を振り返り、どう地域と向き合い、魅力を掘り起こしてきたのかを紹介する。インタビューや対談、図面から各店舗を分析する「おみせ大解剖」に加え、損益も掲載した「袋とじ」も含むボリュームのある1冊。宮崎晃吉・顧彬彬共著。

(2025年 5月号掲載)

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