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- 【電子版連載】次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー:第4回(1)
「韓国におけるDIYリノベの活動とその意義」から「リノベーションの社会的意義と効用の多様性」を考える
相次ぐ自然災害や資材価格の高騰などの影響により、大きな変化が起こりつつある不動産業界。そうした中、「不動産オーナー井戸端ミーティング」を主宰する𠮷原勝己オーナー(福岡市)が中心となり、貸し手と借り手、そして地域にとって「三方よし」となる、持続的でブランディングされた不動産経営を目指す勉強会を有志で開催している。
今回は、「韓国における『DIYリノベの活動とその意義』」について、2023年11月4日に実施された「九州DIYリノベWEEK10周年記念シンポジウム」から、Yoon Zoosun (ユン・ズソン)氏(韓国)の講演をレポートする。
Yoon Zoosun (ユン・ズソン)氏(韓国)

韓国でも空き家が深刻化
私は韓国の忠南大学建築学科で助教授を務めています。19年から「DIT(Do It Together)」と名付けた、参加者と共に空間をつくる活動をしています。韓国では今後、加速度的な人口減少が予想されており、空き家がさらに増えていく見込みです。そのため韓国でも、新築ではなく、DITのムーブメントが必要だと感じています。

DITの活動のきっかけは18年に福岡県にある「冷泉荘」を初めて視察したことです。初めて訪問した冷泉荘には大きなショックを受けました。当時、韓国では住宅やアパートをDIYでリノベーションしたりDITしたりするという概念がまだ存在していなかったからです。私は09年に、韓国の安養(アニャン)という都市で放置されていた不法駐車車両やごみだらけのスペースを、地元住民や建築学科の学生と一緒にきれいにし、椅子やベンチを制作するというプロジェクトを手がけたことがあります。共同住宅でもそうしたことができると知り、大変刺激を受けました。
さっそく私は韓国でも広めたいと思い、冷泉荘の視察から約2~3カ月後に、𠮷原氏を韓国に招待し、韓国の祥明(サンミョン)大学校で初めてセミナーを開催しました。韓国の国立機関である国土交通省のような場所で発表したり、スペースRデザイン(福岡市)の皆さんにも来てもらい韓国の若くてクリエーティブなチームと交流したり、さまざまな取り組みを行いました。
ワークショップを通してDITのムーブメントを広める
19年12月には、韓国で初めてのDITワークショップを開催。DITを通じて、もっと楽しく、面白く、ワクワクするようなムーブメントをつくりたいと思い、さまざまなプロジェクトを行いました。例えば、二つのチームが協力し、ゲストハウスのロビーと、長さ6mのバーテーブルを作るといったことをしました。各種のプロジェクトを踏まえて、私は韓国で初めてのDITに関する報告書を書きました。この報告書は、理論化や政策に反映させるための重要なステップとなりました。

その後、新型コロナウイルスが流行しましたが、DITのワークショップは約2年間で10回ほど続けて実施。SBSという韓国で最大のテレビ局の番組にも出演し、DITの活動が紹介されました。現在でも、DITのムーブメントは韓国のさまざまな番組や新聞で取り上げられています。

大規模なDITワークショップを3日間にわたり公共施設の屋上で行った経験は、特に印象に残っています。私にとって最大のDITワークショップで、とても楽しい経験でした。
(2024年12月公開)
次週公開の記事(2)へ続く