地元の建築家が名物ビルを再生 移住者が集まり地域全体が元気に

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アメリカヤ

山梨県韮崎市。JR中央本線韮崎駅前に1967年から街のシンボルとして愛されてきた名物ビル「アメリカヤ」がある。かつては土産物屋や食堂、旅館としてにぎわっていたが、前オーナーの他界に伴い、閉館。15年間放置されていたところを設計事務所イロハクラフト(山梨県韮崎市)の千葉健司代表が改修。2018年にテナントやコミュニティースペースが入った複合施設として復活した。

 

地元出身の千葉代表にとって、高校時代の通学中に見ていたアメリカヤは憧れの建物。当時、屋上看板のネオンが輝く南国風の建築は独特の魅力にあふれていた。県外で建築を学び、韮崎市に戻った同代表が目にしたのは、鉄骨がさびつき、モルタルがところどころ剥がれ落ちた廃虚同然のアメリカヤだった。リノベーションを得意とする同代表は「廃虚を復活させたらおもしろいし、リノベの魅力や可能性も発信することができる」と確信。前オーナーの息子である現オーナーに連絡を取り、改修から運営、管理まで担いたいと提案すると快諾してもらえた。「オーナーとしては取り壊す予定でしたが、解体費用に困っている状況でした。そうした『負の遺産』をどうしてもリノベしたいという私が現れた。奇跡的なマッチングでした」(千葉代表)

眺望のいい5階コミュニティースペース。普段は地域住民に開放されていて、大人は仕事をし、こどもはゲームをするなど思い思いに過ごしている

 

建物は築56年のRC造5階建て。昭和の古き良き雰囲気を最大限に生かすことを念頭にリノベを始め、屋上のレトロな看板、鉄製の窓やドアなどはそのまま残し、新しく取り入れるパーツも元々あるものと調和するように厳選。一方で、給排水設備や電気配線のインフラを一新し、トイレやミニキッチンを新設するなど水回りをすべて取り換えた。改修費の5000万円は、イロハクラフトが事業費として銀行から全額融資を受けた。

入居テナントはSNSで募集したほか、起業を考えていた知人に千葉代表が声をかけて集めた。オープン時にはすべて埋まり、以降空きはない。

1階はカフェ「ボンシイク」で、2階は食器と雑貨のセレクトショップ、3階は花屋とアイシングクッキー専門店、輸入壁紙と鉄工品、木工品のショールームがそれぞれ入る。4階はイロハクラフトの事務所、5階はデザイン事務所とコミュニティースペース

 

オープンから5年半、今や県内外から人々が集う人気スポットとなった2代目アメリカヤ。周辺には千葉代表が手がけた飲食街「アメリカヤ横丁」やゲストハウスが次々にオープンしている。いずれも高度経済成長期につくられた建物を改修。こうした街づくりに興味を引かれた移住者も多く、高齢化が進んでいた街に活気が戻りつつある。

 

「今後は10軒以上の空き家、空き店舗をまるごとリノベして、移住者が住む『アメリカ村』をつくりたいです」(千葉代表)

改修から運営、管理まで担う千葉代表

夏の風物詩として定着しつつあるイベント「にらさき夜市」。5階コミュニティースペースと駐車場を使って行われる

Before

前オーナーの他界後、15年間放置され、荒廃していた

1967年に開業した初代アメリカヤ。韮崎市民が愛するハイカラな名物ビルだった

After

レトロな屋上看板は夜になるとネオンが輝く。壁や床、階段の手すりはあえて塗装し直さず、元々の風合いを残している

アメリカヤの復活を地域の人々は大いに喜んでいるが、「一番喜んでいるのは現オーナー」と千葉代表は話す。「レコード鑑賞イベントを開催するなど、一緒に盛り上げてくれています」

 

 

 

 

 

 

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