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- 【電子版連載】次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー:第3回(1)
「公共物件・ランドマーク物件のリノベーション」から「まちを動かすリノベーションの社会的意義と効用」を考える
相次ぐ自然災害や資材価格の高騰などの影響により、大きな変化が起こりつつある不動産業界。そうした中「不動産オーナー井戸端ミーティング」は貸し手と借り手、そして地域にとって「三方よし」となる、持続的でブランディングされた不動産経営を目指し、主宰する𠮷原勝己オーナー(福岡市)が中心となり勉強会を有志で開催している。
今回は、「公共物件・ランドマーク物件のリノベーション」について、2023年12月9日に熊本県津奈木町で実施された、村田明彦氏 (熊本県玉名市)と川畠康文氏 (鹿児島県鹿屋市)の講演を全4回に分けてレポートする。
村田明彦氏 (熊本県玉名市)
歴史的まち並みを修復・保存するプロジェクトに従事
私は10年間、東京都で仕事をした後、故郷である玉名市に戻り設計事務所を立ち上げました。玉名市は熊本県の北部に位置し、台湾積体電路製造(TSMC・台湾新竹市)の同県菊陽町の工場よりさらに北側にあります。
玉名市には「高瀬」というエリアがあります。高瀬エリアは玉名市の中心街で、菊池川と繁根木川という二つの川に挟まれた、かつて海運貿易で栄えた場所です。江戸時代には菊池川沿いで取れた良質な米を大阪などに運び出し、非常に繁栄していました。そのため、今でも多くの歴史的な史跡が残っています。
この旧高瀬町の通りは、バブル崩壊後の不景気の影響もあり06年頃はいわゆるシャッター通りのような状態でした。熊本県建築士会としてこの現状を目の当たりにし、古いまち並みが壊れていくのを防ぐため、07年から勉強会をスタート。08年には「街づくり高瀬地区景観形成住民協定」が結ばれ、建物の修復・保存事業が本格的に始まりました。江戸・明治期から残る建物を保存・修復し、地域の活性化につなげようという運動です。私は当時、熊本県建築士会の担当として同事業の保存作業に従事しました。
▲古い建物を修復して保存する活動に参加
修繕が活性化につながらなかった理由
10年かけて古民家や髙瀬商店街など13件の建物の修復工事を行いましたが、結論としては、あまりまちの活性化には貢献できませんでした。
その理由は何なのかを考えていたときに、DIYでリノベしている𠮷原オーナーたちと出会いました。16年に私の事務所を移転したときです。この出会いにより移転先である旧ガソリンスタンドだった建物をDIYで改装するという経験を得ました。これが私にとって初めてのDIYでした。
▲ガソリンスタンドをDIY で再活用
改装に際し「何を」つくるかが重要であることはもちろんですが、「どうやって」つくるかという過程そのものも非常に大切な意味があることに気が付きました。建築士として、高品質なものをつくることは当然の目標ですが、それ以上に重要なものが建築過程に存在するのだと感じたのです。
この経験から、前述した旧高瀬町の修復プロジェクトが、まちの活性化につながらなかった理由に気付きました。そこに住んでいる人々が自身の手で建物を修復するという体験を共有する機会をつくらなかったことが、まちの活性化につながらなかった要因の一つではないかと考えたのです。
(2024年10月公開)
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