【連載】パリの賃貸不動産事情:第11回

賃貸経営住宅設備・建材

賃貸住宅に苦労はあれども住みたい街

 ボンジュール、坂田夏水です。統一感のある建物が並ぶパリ。今回は物件の一般的な造りや、住むことができるようになるまでの話をします。

建物の構造や設備

 パリでは、階によって天井の高さが違い、外から見ると窓の高さでそれがわかります。市中心部は築150年以上の建物が多いのですが、かつては2階か3階に貴族が住んでいました。4階は貴族ではないけれど身分の高い人が住み、上にいくほど貧しい住人が多くなり、最上階は学生か家政婦の家、というのがよくあるパターンです。

 もちろん、貴族が住んでいた豪華な内装の物件は家賃が高いのですが、最近はリノベーションの効果があり、最上階の屋根裏部屋が人気です。実は私の家も屋根裏にあります。築270年ですが、昔はホテルだった建物なので、元は従業員の部屋だったのでしょう。

▲屋根裏部屋のわが家のリビング

 賃貸事情で日本人としてはなかなか妥協できない点が、風呂とトイレが一つの部屋に配置されていることです。ファミリータイプの家でも多くあります。部屋は広いのですが、風呂とトイレが一緒になっているのは違和感があります。そしてバスタブがない家があること。バスタブに漬かる習慣がない人が多いため、シャワーで十分と考え、リノベするときにバスタブを外してしまうケースがあるようです。

 また日本と違う点といえば、家の中のオール電化が挙げられます。パリでは当たり前ですが、コンロはIH(電磁誘導加熱)仕様、暖房も給湯器も電気です。

 というのは、昔のパリの一戸建てにはガスコンロがあったそうですが、建物が古くメンテナンスが不十分のためガス爆発や火事の原因となっていました。そのため今では家にガスコンロが付いている家はほとんど存在しません。反対に、地震が多い日本でガスが当たり前なのは不思議に感じます。

審査通過の難しさ

▲各階の高さの違いが外観からわかる

 歴史が古く美しい建物がとても多いパリには家具付きの家もあり、内覧時にここに住めたらと想像が膨らんで楽しいのですが、実際の申し込みでオーナーの審査に通るとは限りません。

 以前一緒に物件を回った知人が入居の申し込みをしたところ、審査担当者からの返事はなく電話をかけてみると「もう別の人に決まった」と言われたことがありました。もし本当にパリに住みたいのであれば、現金で物件を購入するのが一番です。

 

 ただし、賃貸でも売買でも、物件のオーナーは住む人の品位を見ていることをお忘れなく。もし住人に問題があった場合、同じ中庭を共有する別のオーナーからクレームが入るためです。

引っ越しはクレーンと人力

 運良く契約までたどり着いたら、次は引っ越しです。パリのアパートはエレベーターがあったとしても2人しか乗れない小さなものが多いので、冷蔵庫やベッド、洗濯機などはエレベーターに入りません。そのため家の前に駐車したクレーン車で家具や家電をつり上げ、窓から搬入するのです。しかし、古い建物は窓の高さはあっても幅が狭いことが多く、その場合は階段を使って人力で運ぶしか選択肢はありません。
 引っ越しが無事に済んでも、給湯器が故障してお湯が出なくなったり、雨漏りしたりと家にまつわる問題はたくさん発生します。しかしそれを超える街の美しさがあります。

建材紹介

パリではのみの市やアンティークショップで昔の古い金物が人気です。ほとんどが真ちゅう製なので、100年以上経過していてもさびませんし、むしろ古い金物のほうが品質が良いので高値で取引されています。私が集めたパリのアンティーク金物をインターネットショップ「MATERIAL(マテリアル)」で扱っているので見てみてくださいね。

 

夏水組(東京都武蔵野市)
坂田夏水 代表

【プロフィール】
1980年生まれ。2004年武蔵野美術大学卒業。アトリエ系設計事務所、工務店、不動産会社勤務を経て、夏水組設立。空間デザインのほか、商品企画のコンサルティングやプロダクトデザイン、インテリアショップ「Decor Interior Tokyo(デコールインテリアトーキョー)」、インターネットショップ「MATERIAL(マテリアル)」の運営などを手がける。22 年よりパリで日本の建材店「BOLANDO(ボランドウ)」の運営を開始、現在パリ在住。

(2025年 3月号掲載)

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