VOL.6 木造住宅の欠点は腐朽リスクとシロアリ
低層の高気密・高断熱の建物ならば、木造が最も有利です。今号は、木造住宅における大きなリスクになりつつあるアメリカカンザイシロアリについて説明します。
被害が急増している 在来種と異なる生態
近年被害が急増しているアメリカカンザイシロアリという外来種は、これまでの蟻害(ぎがい)の中心であったイエシロアリやヤマトシロアリとは、生態が全く異なります。そのため、従来の防蟻処理では通用しません。
生息エリアも年々拡大しており、従来は寒い地域にはいないといわれていましたが、今や岩手県まで被害は拡大しているようです。

アメリカカンザイシロアリは、飛来して自ら羽を落として隙間から侵入したり、輸入家具に紛れ込んできたり、あらゆる場所から侵入します。そして、「カンザイ」という名のとおり、乾いた木材のわずかな水分があれば生息可能です。そのうえ家の構造材自体に巣をつくり、2階の柱や梁、屋根の構造材である小屋組みなど、家の中にどんどん巣を広げていくのです。
そのため、建築基準法が要求する地盤面から1m以内の部分の防蟻処理では、通用しないのです。
従来の点検では発見できず 知識がなければ難しい
もう一つ厄介なのは、発見が難しいということです。今までは、定期的に床下を点検して、3月号で説明した「蟻道」がなければ、シロアリはいないと判断することができました。ところが、アメリカカンザイシロアリは蟻道をつくらないため、従来の点検では見つけることはできません。
アメリカカンザイシロアリの糞粒(くんりゅう)が床に落ちていることに気付けば、被害を発見できるのですが、アメリカカンザイシロアリの糞粒は乾燥していて、植物の種にしか見えません。よく見ると、俵状で6本の筋があるのが特徴です。知識のない一般の人が、これがアメリカカンザイシロアリの糞粒だと気付くことは難しいと思います。
そしてさらに問題なのが、駆除が非常に難しいということです。従来型のシロアリ駆除に用いられる合成殺虫剤は、この外来型シロアリに対し一部の巣には効果がありますが、巣全体を駆除できず、一時的な効果しかありません。

米国では、家全体をビニールシートで覆い、燻蒸くんじょう処理を行っています。それほどまでにどこにでも巣食うのがアメリカカンザイシロアリの恐ろしいところです。住居が密集している日本では同じ方法を行うことはできません。
日本でできる現実的な対応策は、巣の一方に穴を開けて、他方の穴から薬剤が吹き出すまで薬剤を注入する穿孔せんこう注入処理ですが、かなりのノウハウが必要なうえに、相当な手間暇がかかります。そのため、一般的なシロアリ駆除事業者はアメリカカンザイシロアリの駆除には対応していません。そのうえ対応しているごく一部の駆除事業者のキャパシティーは、すでにパンク状態になっているようです。
新築時にすべき対応 ホウ酸処理、加圧注入材
前述のとおり、日本の木造建築物のほとんどはアメリカカンザイシロアリに対して有効な防蟻処理は行われておらず、無防備な状態にあります。その結果、この非常に厄介なシロアリの被害は、さまざまな地域で急増しています。
今後、この被害はどんどん深刻さを増していくことが懸念されます。では、アメリカカンザイシロアリの被害を防ぐ方法はないのでしょうか。
実は新築時ならば、それはそれほど大変なことではありません。3月号で説明したホウ酸処理、もしくは加圧注入処理材を地盤面から1m以内の部分や1階だけでなく、主要構造材のすべてに行えばいいのです。
特にホウ酸処理であれば、30坪程度の新築住宅で従来の1m以内の部分の処理費用に、20万円程度費用を追加すれば、主要構造部すべてに処理を施すことが可能です。もう少し規模の大きい賃貸アパートであっても、それほど大きな金額になりません。ぜひ、新築時にそのような対応をすることを勧めます。新築時に標準仕様で行ってくれる工務店・ハウスメーカーが増えていくことが望まれます。
既存住宅の場合は、スケルトンリノベーション時にこの処理を行うことは可能ですが、そのようなリノベが行われるケースは多くないと思います。また抜本的な対策ではありませんが、「ダスティング処理」といわれる小屋裏や床下にホウ酸の粉をまいておく方法があります。

ホウ酸の粉の上をシロアリが歩くと体にその粉が付着します。シロアリには、グルーミングという個々もしくは仲間同士で体をなめてきれいにする習性があります。付着したホウ酸の粉をなめてしまうことで、ホウ酸を体内に摂取します。すると、最終的には死んでしまうため、一定の防蟻効果は期待できます。
既存住宅でアメリカカンザイシロアリ被害が心配な人にはおすすめの方法です。
住まいるサポート(神奈川県鎌倉市)
高橋 彰代表取締役

全国で180社以上の工務店などと提携し、家主とのマッチングを中心に高気密・高断熱住宅に特化した住まいづくりのサポートサービスを提供。性能にこだわる建築家の紹介や、高断熱賃貸住宅プロジェクトサポートも手がける。東京大学大学院修了。現在、同大博士課程で高断熱木造建築について研究中。
(2025年 4月号掲載)
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