過去に学んだマーケティング論で入居者を想定して物件を購入
家主業の傍ら生命保険の調査業やオンラインでの営業代行をする奥憲一オーナー(東京都江戸川区)。家主業をする前は、税理士法人や生命保険会社で営業職として働いていた。
奥 憲一オーナー(48)(東京都江戸川区)
賃貸経営を始めたのは2016年。当時住んでいた大阪府茨木市の区分マンションを、東京都内への転勤を機に貸し出したのがきっかけだ。18年には祖父母が兵庫県伊丹市に所有していた築古のアパート(全6戸)を相続した。その後、築古物件への投資に家主の関心が集まっていた21年に、茨城県つくば市にある築古戸建てを購入。23年には自宅に近い江戸川区内の2LDK4戸のアパートをオーナーチェンジで購入した。
奥オーナーは「物件の選定にあたっては、生命保険会社に勤めていたときに自己研さんのために通った起業家育成講座の中で、マーケティングを勉強したことが役に立ちました」と語る。
講座では、自分(自社)の強みを見いだすことと、ペルソナ設定とも呼ばれる典型的なユーザー像の具体化などを学んだ。「賃貸経営に置き換えると、例えば学校に近い物件なら子どもがいるファミリーを一番に想定するといった具合です」(奥オーナー)
駅から遠くても強みを見いだす
実際に購入したときはどうだったのか。つくば市の築古戸建ては、居住していた前所有者が引っ越したのに合わせて購入し、賃貸に出した。最寄り駅から徒歩50分の場所に立地しており、一見すると客付けが難しいように思えたが、物件自体は建築面積が90㎡と広く、2台分の駐車場を備えていた。「つくば市は車社会。車を所有する人であれば、駅からの距離はさほど問題にならないと考えました。広さに加えて駐車場が2台分あったことも合格でした。ファミリー向けにぴったりだと思い、購入を決めました」と奥オーナーは振り返る。同物件には想定したとおりにファミリーが入居。その後に退去が発生するも、1カ月以内に新しい家族が入居してきた。
江戸川区のアパートは購入時、築8年で満室の状態だった。最寄りの東京メトロ東西線葛西駅からは徒歩18分の距離だが、その一方で物件から徒歩10分の場所にショッピングモールが立地している。奥オーナーは「駅から遠くてもショッピングモールに近いので、仮に退去が出てもファミリーを想定して客付けの後押しになると考えました」と語る。実際に、購入直後の23年6月に1世帯が退去したため、翌月から募集を開始したが、9月には新たに若い世代のファミリーの入居が決まった。
「マーケティングを学んでいたのは、当時携わっていた営業の仕事のスキルアップが目的でした。不動産経営に生かそうとは考えもしなかったですが、結果的には学習した理論が自分の中で物件選定時の判断基準になっています。自信を持って物件を買うことができるようになりました」(奥オーナー)
(2024年11月号掲載)
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