不動産経営で得た知見 故郷の空き家問題に生かしていく
宇坪正敏オーナー(東京都中央区)は1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)に4棟67戸、区分マンション1戸を所有する。賃貸経営を始めたきっかけは、当時勤めていた外資系保険会社で不動産投資を行っている同僚が多くいたためだ。
社会人になって間もなく、株の投資は始めていた宇坪オーナーだが、不動産投資を開始したのは2017年のことだった。「会社の成績優秀者の表彰式に顔を出し始めると、自然と投資の話になっていきました」と当時を振り返る宇坪オーナー。FX(外国為替証拠金取引)投資について話す同僚や、新規公開株を紹介してくる先輩など、投資への誘いは多かった。だが、例えばFXのように値動きが激しい投資の場合、気になってしまって本業に集中できないと考えたため、手を出すことはなかった。
宇坪正敏オーナー(50)(東京都中央区)
一方で、不動産の場合は、長期目線での投資のため、目先の利益に一喜一憂することはない。何より銀行から融資を受けて投資ができる。その2点に引かれて不動産投資を開始した。17年2月から3月末までに4棟を次々と取得。バランスを考えて、単身者向けワンルームを2棟、ファミリー向け物件を2棟購入した。
そのうちの1棟で埼玉県草加市にあるファミリー向け物件は、購入時に32戸中12戸が空室だった。管理会社と打ち合わせをするも、どうも動いている様子はない。思い切って管理会社を変え、細かく打ち合わせを行うことで1年かけて満室にしていった。ほかの物件でも管理会社と話し合いをしながら、対策を講じている。現在はどの物件もほぼ満室経営中だ。
今まで振り返らなかった故郷 地元の問題解決に携わりたい
今後は、特に東京で規模を拡大したいと考える一方で、宇坪オーナーの目は生まれ故郷である和歌山県田辺市にも向いている。高校進学と同時に地元を離れていたが、2年前、母の終末期をきっかけに頻繁に地元に戻るようになった。地方都市のご多分に漏れず、人口の減少や空き家といった問題を抱える地元の、課題解決に携わりたいと考え始めたのだ。
21年に資産運用のコンサルタントとして独立した宇坪オーナーは、東京で培った知識と経験を生まれ故郷に還元すべく活動を開始。地元の商工会議所に加入し、現在は田辺市役所の空き家対策事業にも関わっている。「不動産と一口にいっても裾野は広い。例えば、使われていない不動産を地域資源と組み合わせ、ホテル事業を行うのも選択肢の一つ」と話す宇坪オーナー。ホテル事業であれば、地元の雇用創出という形でも貢献できると考えている。
地元を離れたからこそ客観的な視点を持つことができた。「将来的には宅地建物取引士を取得して田辺市で不動産事業を行うことも視野に入れています」と今後の抱負を語る。
▲田辺市商工会議所で金融セミナーを行う
(2025年1月号掲載)
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