日本における空き家と貧困問題
同時に解決するソーシャルビジネス
地域の困り事になる空き家を借り上げ、そのリフォームの補助作業を、一時保護の必要な人々に依頼する。空き家と貧困という二つの問題を解決する仕組みを構築しているのがRenovate Japan(リノベートジャパン:東京都国分寺市)だ。甲斐隆之代表に話を聞いた。
Renovate Japan(東京都国分寺市)
甲斐隆之代表(30)
――どのように二つの問題を解決に導くのですか。
当社では、空き家を借り上げ、リフォームした後、賃貸物件として貸し出しています。そのリフォームの補助作業を担当するのが、一時保護の必要な生活困窮者です。彼らを「リノベーター」と呼んでいますが、リノベーターには、すでにリフォームの済んだ一室に住んでもらいます。
工事期間中は、住み込みで残りの改修作業を手伝ってもらうので、住む場所と仕事を提供する形です。空き家はリフォームされて賃貸物件として収益を生むようになりますし、一時保護の必要な人々は経済的自立への一歩を踏み出せるのです。
――住み込みということは、賃貸借契約ではないのですね。
アルバイト契約における社宅の扱いとして提供しています。リフォーム作業自体は表層リフォームですが、リノベーターは研修を受けたうえで改修作業に参加します。時給1200円で依頼し、そのうち水道光熱費として1泊に500円を受け取っています。
2020年の立ち上げ以降、2年間で4戸の戸建て住宅でのリフォーム工事を実施し、5人のリノベーターを受け入れました。一緒に工事を行い、雑談をする中で、就労か家族との再接続か、あるいは生活保護受給か、各人に合った支援方法を見つけていきます。
――今までにない仕組みで、理解されないこともあったのでは。
会社を立ち上げて半年は、誰にも相手をされませんでした。東京都国分寺市で最初の物件を手がけた後は、実績に興味を持ってもらえ、すべてオーナー側からの問い合わせで物件の紹介につながっています。
――今後、どのように展開を考えていますか。
将来的には、工務店や不動産会社と組んでいけると広がりが出ると考えています。現状では、リノベーターに対して、研修もおこなっており、教育費がゼロではありません。非営利的な手法を混ぜながら、社会性と事業性のトレードオフをさらに減らしていければ、協業しやすくなるのではないかと思います。例えば、住み込みをすることで、最終的な入居者が決まる前のモニターにもなると考えています。
また、当社の取り組みがもっと知られることで「リノベーターがリフォームに参加した物件に住むことが社会貢献になる」と認知され、物件の付加価値の一つにまでなれたらと思っています。(長谷川律佳)
埼玉県出身。一橋大学経済学部を卒業後、カナダ・トロント大学で修士号(経済学)を取得。新卒で日系大手シンクタンクに入社し、公共政策の後方支援に従事した。2020年10月にRenovate Japanを設立。空き家と貧困問題にフォーカスし、住宅リフォームを通じて、生きづらさを抱える人たちの経済的自立を支援する。
(2024年6月号掲載)
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