エリア座談会 第1回新潟県

土地活用賃貸住宅

家主5人が語る〝新潟の今と今後の夢〟

 賃貸住宅は日本中に必要なインフラだ。地域に合わせて物件を経営するオーナーも各地にいる。その土地の家主の経営状況や悩み、今後の目標からは地域の魅力や将来性が見えてくる。全国各地を巡り、現地の家主に座談会形式で話を聞く本企画。第1回は新潟県をお届けする。

─皆さんの所有物件について教えてください。

横山昌弘オーナー(以下、横山)

 では、まず私から。新潟大学周辺の学生向け物件を中心に所有しています。築年数は新築から40年まで幅広いです。今は新築を建設中で、竣工後は10棟62室になります。

水落寛オーナー(以下、水落)

 私は今10棟目を新潟駅南エリアに建築中です。新築は4棟目。40㎡超の1LDKでDINKSを想定しています。完成すると80戸所有になります。戸数が多いエリアは新潟大学周辺です。

中山孝久オーナー(以下、中山)

 現在は戸建てを含めて11棟87戸を所有しています。エリアは三条市に1棟、新発田市に1棟、それ以外はすべて新潟市内です。今まで24戸の売却経験があり、これからも売却を進めようと考えています。賃貸住宅の供給過多もますます進行していくため、本当に立地の良い旺盛な需要がある所だけを次世代に残したいです。

岡朋子オーナー(以下、岡)

 私は5棟30戸に戸建てが1戸です。エリアは新潟市中央区、西区、長岡市で、2023年の1月に新築した長岡市の物件だけが2LDKでほかは1Kです。築年数は30~37年が主で、安く買ってDIYしています。

小川健司オーナー(以下、小川) 

 私は6棟52戸。23年の7~8月に12戸ほど区分所有マンションを売却しました。今までも100戸買って40戸くらい売っているので売却はほかの家主より多いかもしれません。売るつもりで買ったわけではないけれど、区分所有マンションは退去後に実需で売れるので。売却ばかりでは賃貸事業が成り立たないので購入もしていきたいです。主なエリアは新潟市、長岡市、柏崎市ですが、埼玉県や東京都にも所有しています。

─皆さん、所有戸数が多いですね。管理や経営はどうしているのですか。

小川:私は信頼できる管理会社探しに力を入れています。新潟だけでなく、関東にも物件を所有しているので、特に遠隔地の物件は頻繁に見に行けないからです。今まで出会った事業者は、〝いい会社〟ばかりなので苦労知らずかもしれません。

中山:私はなるべくアウトソーシングするようにしています。そもそもほかの事業をしているので自分では経営できないですし、アウトソーシングできることこそが賃貸事業のメリットでしょう。利回りは下がりますが、自分でやるより仕上がりもいいです。人に頼んでも利益が確保できるような物件を買うことも大切です。

水落:新潟市内の物件では、売買仲介事業者にそのまま管理をしてもらうことが多いです。きちんと仕事をしてくれるところであれば継続して依頼しています。兼業家主だった頃は管理会社とのやりとりに時間を割けなかったので、メールにきちんと返信してくれるかどうかが大きなポイントでした。

横山:私も自分のチームをつくる意識で、管理会社をはじめ周囲の事業者といい関係を築いています。もちろん経営なので利益も大事ですが、独り勝ちせずにみんなで成長していくのが賃貸経営の醍醐味だいごみ。先日は新築物件の企画において設計士と管理会社を巻き込んでアイデアを出してもらいました。

岡:私も管理会社に依頼していますが、自分でDIYもするのでそういった意味では賃貸経営者というよりは「大家さん」に近いかもしれません。ちなみに中山さんをはじめ、家主の師匠はたくさんいます。

─賃貸経営でのトラブルで一番印象的なものは何ですか。

▲左から中山オーナー、岡オーナー、横山オーナー

小川:そうですね。何といっても孤独死ですね。亡くなった人が運ばれて行く様子を近隣の人に見られているわけですから、次の入居者には告知しました。不動産会社と警察に任せることができて(私は現場を見ずに済んで)本当にありがたかったです。原状回復費用は保証人が分割で払ってくれました。回収できないかもしれないと思っていましたがよかったです。

岡:私は高齢者の入居も歓迎ですが、孤独死保険と死後事務委任契約で備えています。JR新潟駅前の立地のいい1Kのアパートに75歳以上の単身入居者が住む部屋が3戸ありますが、1カ月に1回はお菓子を持って様子を見に行きますね。

中山:私はこの前、生活保護受給者の人から振り込みがなくて「これは孤独死かも」と思っていたら、本人から電話がかかってきて。その電話が「今月の家賃が払えない」という内容だったのですが、生きていてよかったという喜びで、思わず「分割払いでいいですよ」と言ってしまいました。

水落:「あー、だめかもしれない」と思っていたら生きていたというのはうれしいですね。

横山:私も孤独死は1回経験しています。恐らく亡くなってから1カ月くらい。夏だったので臭いがすごかったです。大学近くの部屋でしたが高齢男性の1人暮らしで。修繕費用については最終的に親族が費用を負担してくれることとなり事なきを得ました。管理会社と協力し、親族とのコミュニケーションを密に行ったことで実現できたことです。今もまだ空室ですが、家賃が安い部屋だったので経営への影響は少ないです。

水落:でも、最近の高齢者は孤独死があった物件でも気にしないで住んでくれますから、きっと大丈夫。

小川:そうそう、孤独死はこれから増えていく。むしろ、当たり前のこととして家主も入居者も気にしないようになるのではと思っています。

─ほかにはどんなトラブルがありましたか。

岡:私は新築工事の真っただ中にトラブルに見舞われました。隣家の人に、「物件から見られるのが嫌だから、窓をすりガラスに変えろ」と急に言われて。結局、60万円負担して全12戸のすでにはめていた窓をすりガラスに交換しました。でも、変えたら相手方が優しくなったのです。今は仲良しですね。

小川:私も似た経験があります。埼玉県に建てたもので建設会社に任せていたら、「この窓の位置だと自分の家の風呂が見える。窓の位置を変えてくれ」と隣人から苦情が入りまして。今更窓の位置は変更できないので、竣工時にカーテンをつけることで対応しました。竣工後も別件で苦情が入り続けたので、家主として一度あいさつに行くしかないと。持って行ったのが新潟の名酒、朝日酒造の「久保田 萬寿」。結局隣人がお酒好きだったことで礼状が来ました。今では、「今度はこちらがリフォームするのでよろしくね」と毛筆の手紙が来るほどです。

横山:「久保田 萬寿」は世界を救う…。

水落:私は隣人の懐柔に失敗してはや3年です。隣家から「井戸が枯れる」と言われたのでやむを得ず井戸の場所を動かしたら、今度は給湯器の設置位置が悪いからうるさいと。市役所を交えて5回くらい話しましたが解決できませんね。もう裁判しかないかもしれません。

中山:裁判をするかどうかは経営者の考え次第でしょう。難しい問題だと思いますが費用対効果が大切ですね。

水落:井戸の移動だけで50万円かかっているのに、最初に要求を飲んだばかりにこんなことになってしまいました。

岡:新築の際には自ら、「これからこういう仕様でこういうのを建てますけどいいですか」と出向いたほうがいいかもしれないですね。

─最後に、皆さんにとっての賃貸経営の魅力や今後の目標を教えてください。

▲左から水落オーナー、小川オーナー

岡:私は事業者というよりは一人の家主としてやりたいことを極めていきたいです。最近知り合いの家主が、大きな土地を購入し、同じ土地の中に自宅・戸建て賃貸、一棟もののアパートを建てていて。私も大きな土地を購入して同じようなことをやってみたいと思っています。題して「岡の村」!

横山:私は村には興味ないな(笑)。今は、新潟大学周辺を中心としたドミナント戦略で経営していますが、今後は、リスク分散で少しエリアを広げてもいいかと思っています。新しい事業者探しからですね。住んだことがある土地を中心にエリアを考えてみようと思います。

水落:私はかつてサラリーマンでしたが、家賃収入を得て脱サラし時間をつくることができました。この時間を生かして、社会保険労務士としての活動や居住支援もできています。自分が好きなことを仕事にできるのがいいですね。賃貸経営に限らず、自分の仕事に全力投球します。

小川:実は私の家は古くから続く着物屋だったんです。でも、賃貸経営を家業としようと決めて、3年前に営業譲渡しました。不動産は客がいなくても土地に価値があるのでお金も借りやすいのが魅力です。子どもには賃貸経営だけを同じ屋号で引き継がせる予定です。

中山:うちも理美容事業を240年ほど前の天明の時代からずっとやってきて。私で7代目なのです。「体が資本」の理美容事業だけでなく、万一のけがや病気があっても持続可能な事業として賃貸経営を2本目の柱としました。代々、同じ法人で理美容事業を受け継いできましたが、子どもの代である8代目からは子ども自身の選択により不動産賃貸業になります。賃貸経営のおかげで法人を承継してもらえそうです。

参加者の皆さん

(2024年1月号掲載)

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