永井ゆかりの刮目相待:10月号

賃貸経営不動産投資

連載第85回 選択肢を増やす

知識量の大切さ

「不動産を探す人が重視する物件の募集条件は、何でしょうか。事務所、住居、店舗、それぞれの場合で考えてみましょう」

 先日参加した一般社団法人不動産オーナー経営学院REIBS(リーブス:名古屋市)が運営する賃貸経営学科の講座で、講師が受講生に投げかけていた質問だ。
当たり前だが、同じ不動産でもどんな用途で貸し出すかによって、入居者の重視する募集条件は変わってくる。

 この講座では、受講生がグループに分かれて、約30項目の募集条件の中から考える。その後に発表し、最後に講師が解説。受講生グループが選択した項目が各々微妙に違っていたことも興味深かったが、講師の解説は非常に勉強になった。

 恐らく本誌の読者の多くは、マンションやアパート、戸建てなどの賃貸住宅と、駐車場を所有する人が多いだろう。そのため、所有していない事務所や店舗についての関心は高くないかもしれない。

 だが、改めて考えると、これからの時代は、今所有している不動産の種類に限らずに、幅広い知識を持つことが重要ではないだろうか。建物が立つ場所は変わらなくても、その周辺環境は変わる。時代が変われば、入居者の住まい方はもちろん、ビジネスの内容も変わってくる。こうした状況の中で、現在は住居として賃貸していたとしても、そのまま同じ用途で貸し続けることが経営的にいいかどうかは常に検証したほうがいいだろう。

可能性を広げる

 例えば、民泊や旅館への転用を考えてみよう。特定の人が暮らすことになる住居とは異なり、利用する人は基本的には短期的に滞在する旅行者。旅行者が利用しやすいという観点で内装や備品を検討し、変える必要がある。

 もちろん、どの立地でもニーズがあるわけではないので、民泊や旅館に転用できる物件は限られる。条件が合うのであれば、住居として貸すよりも売り上げ増加を狙えるのが魅力。一つの選択肢として情報を得たり、知識を身に付けたりすることは大切だろう。

 ただし、民泊や旅館は今のトレンドとして注目されているが、始めるハードルは高いかもしれない。

 一方、事務所や店舗については、同じ不動産賃貸事業であり用途変更のハードルは低い。しかも、今は法律も緩和されている。2019年の法改正までは、用途変更の大きなハードルは役所へ申請しなければならないことだった。しかし今は、延べ床面積200㎡以下であれば、申請が不要だ。こうした制度変更も含めて知識を持っていれば、自身の経営の選択肢を広げることができる。

 選択肢を増やすということは、事業の可能性を広げることにつながる。不動産活用というだけでもかなり領域が広いが、それでも貪欲に情報を収集して、知識を身に付ける。それが不動産オーナーにとって必要になっていくのではないだろうか。

【Profile:永井ゆかり】
東京都生まれ。日本女子大学卒業後、「亀岡大郎取材班グループ」に入社。リフォーム業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌などの記者を経て、2003年1月「週刊全国賃貸住宅新聞」の編集デスク就任。翌年取締役に就任。現在「地主と家主」編集長。著書に「生涯現役で稼ぐ!サラリーマン家主入門」(プレジデント社)がある。

(2024年10月号掲載)
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