お金の流れがわかるように 公正証書を作成し争い防ぐ
同族企業のオーナーは、感情のもつれからトラブルが発生するケースが多いという。特に相続や離婚の際に争いが生じやすい。同族企業オーナーに発生しやすいトラブルを、森・濱田松本法律事務所(東京都千代田区)の大石篤史弁護士に聞いた。
森・濱田松本法律事務所(東京都千代田区)
大石篤史弁護士(51)
相続
親族関係の不満が露呈 遺言書や遺留分に関するもめ事
一族企業オーナーからの相談を多数受ける大石弁護士によると、彼らは、所有財産のスケールが大きいことに加えて親族関係の不満からトラブルになりやすいという。「生前に被相続人から冷遇された相続人が、遺産分割の際に優遇されていた相続人ともめるケースが多いです」と大石弁護士は話す。
例えば、遺言書に不利な項目が書かれている相続人が「被相続人の意思能力がほぼ喪失した状態で無理やり書かせた」と、書類の無効を主張して訴訟に発展するケースが多い。トラブルになる可能性を低くするためには自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言が有効だ。公正証書は第三者である公証人が作成するため、一般的に遺言の有効性を争うことが難しくなる。
遺留分に配慮した遺言を
また遺言書に従って相続する際に発生しやすいのが遺留分のトラブル。遺留分とは、法定相続人が最低限受け取ることができる持ち分だ。被相続人に複数の婚姻歴がある場合は、認知していなかった子どもが遺留分を主張してくるケースが考えられる。なお認知していない子どもには法定相続分は与えられないが、被相続人が亡くなった後でも死後認知は認められる。
そのため、亡くなる前に遺留分に配慮した遺言書の作成や、身辺整理をする必要がある。身辺整理では子どもを認知したうえでお金を渡し、遺留分を放棄してもらう裁判手続きが効果的だという。
公正証書遺言
公証役場で公証人に作成してもらう遺言。遺言者の遺言内容について、証人の立ち会いの下で間違いがないことを確認して署名・押印する。遺言者が保管する原本のほかに、公証役場で保管する正本、謄本が作成される。
イラスト提供:遺産相続手続まごころ代行センター
(2024年11月号掲載)
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