フランスの宅地建物取引事業
ボンジュール、今回は宅地建物取引事業について話します。
取得が難しい事業者資格
フランスに来て驚いたことは、土地と建物は一体で取引されるということです。日本のいわゆる宅地建物取引業法のようなものはなく、不動産はフランス民法により所有権が認められています。「土地の所有者は、地上および地下の所有を含む」とされているため、土地と建物の登記を別々に行うことがほぼありません。
不動産事業には政府の厳格な規制があり、免許の取得には、政府が認定する大学で不動産関連の学位を取得していること、業界での経験、保証協会への加入などが必要です。日本で不動産事業者になるよりもハードルが高いと思います。そのため、フランスでは無免許で物件仲介を行っている場合もあります。ちなみに、SNSで見つけた連絡先に家の保証金を振り込んだら詐欺だった、ということはフランスではよくある話です。まず不動産事業者が正規の免許の保持者であるかどうかを確認する必要があります。
公証人の大きな役割
不動産売買も簡単ではありません。契約の際に、Notaire(ノテール)への依頼が必要になります。ノテールとは公証人のことで、書面や契約に信頼性を付与する役目があり、日本でいうと司法書士や弁護士にあたります。
買主側のノテールは物件調査を行うことで、リスクや買主が不利になることを契約前に防ぎます。売主側のノテールは、DDTという建物診断書を作成します。この書面により、築年数が古いフランスの建物で多く問題になる電気配線・ガス管・水道管の状態も確認できます。
また日本の重要事項説明書と違って、フランスでは建物診断書にエネルギー性能診断(以下、DPE)を明記しなければなりません。DPEとは、電気の年間消費量、断熱性能などの情報がランク付けされているもので、物件の取引価格に大きく影響します。2025年以降エネルギー性能の低い物件は不動産取引が禁止されることもあり、売主はDPEのランクを上げるために内装工事に力を入れています。
ノテールの手数料は物件価格の約2・5~8%です。この中には不動産登記税、不動産公示税、県税、市税、その他登記に必要な諸経費が含まれ、実際の手取りは1%程度とのこと。
不動産売買にノテールは不可欠である一方で、5%程度の不動産事業者への仲介手数料が買主に必要になるため、不動産事業者の仲介を避けるケースも多いようです。
▲DPEは不動産店舗の物件情報にも記載される
不動産価格の情報
フランスでの不動産の評価基準は2種類あり、フランス独自のものとヨーロッパ基準のものになります。欧州は移住者が多いため、フランス国外の人がフランスの不動産を買う場合と、フランス在住の人がスペインやイタリアなどの欧州の不動産を買う場合で使い分けられます。日本の不動産流通標準情報システムである「REINS(レインズ)」のようなものはフランスには存在しません。
不動産の価格情報は一般公開されていることが多く、14年以降の不動産取引を「DVF」というサイトで政府が公開しています。地図で分類されていて使いやすいサイトです。
「ヴェネチアンプラスター」は、大理石、砂、石灰などを含んだプラスター(漆喰)を壁に塗布し、研磨することで光沢のある柔らかい質感をつくり出す「塗り壁材」です。夏水組が選び抜いた絶妙な色合いのイタリアンカラーは全6色。塗布の仕方や研磨次第でオリジナルの壁を制作でき、圧倒的な表現力を持つDIYアイテムです。
夏水組(東京都武蔵野市)
坂田夏水 代表
【プロフィール】
1980年生まれ。2004年武蔵野美術大学卒業。アトリエ系設計事務所、工務店、不動産会社勤務を経て、夏水組設立。空間デザインのほか、商品企画のコンサルティングやプロダクトデザイン、インテリアショップ「Decor Interior Tokyo(デコールインテリアトーキョー)」、インターネットショップ「MATERIAL(マテリアル)」の運営などを手がける。22 年よりパリで日本の建材店「BOLANDO(ボランド)」の運営を開始、現在パリ在住。
(2024年11月号掲載)
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