【特集】入居者の満足度を上げる 家主のアイデア集:②プレゼント2

賃貸経営入居者との関係づくり

プレゼント

荷ほどきの苦労を想定して日用品を贈る

 大阪府や奈良県などに40戸を所有し、家主の会「おおや倶楽部(大阪生野共同住宅組合)」を主宰する糸川康雄オーナー(大阪市)は15年ほど前から、入居初日に日用品をプレゼントしている。

糸川康雄オーナー(72)(大阪市)

 日頃から入居者目線を意識した賃貸経営を行っている糸川オーナー。プレゼントを思い立ったのは、段ボールが片付いていない引っ越し後の部屋を見たのがきっかけだった。「入居初日は荷ほどきも大変。食事の準備もままならないだろう」と感じたのである。

 中身がすぐにわかるように透明な袋を用意し、その中に即席麺やインスタントコーヒー、お菓子のほか、シャンプーやリンス、歯ブラシと歯磨き粉、台所用や洗濯用の洗剤、トイレットペーパーなどをそろえる。品物の選定には女性の視点も参考にしており、糸川オーナーは「品ぞろえはまだまだ充実させることができると思います」と語る。

▲入居初日に渡す日用品

 入居者から直接感想を聞くことはほとんどないが「退去が少なく、長く住んでもらえているので、満足してくれているのではないでしょうか」と話す糸川オーナー。実際に10年以上住む人は珍しくなく、現在、入居率は97%を超える。

プレゼント

中元・歳暮をきっかけに直接つながる

 愛知、岐阜、三重の3県に5棟50戸を所有する平松シゲオオーナー(名古屋市)は、入居者に中元・歳暮を贈っている。 

平松シゲオオーナー(56)(名古屋市)

 先輩家主を見習って2021年から始めた。入居者が気軽に受け取ることができるように、品物は手頃な価格のもので、いわゆる「消え物」を選ぶようにしている。例えば、歳暮ではイタリアのクリスマス用お菓子のパネットーネ、中元にはルイボスティーなどだ。これらを入居者宅に直接届ける。不在であればドアハンドルに掛けておく。「入居者に喜んでもらえるので、私もうれしいです」(平松オーナー)

▲平松オーナーが贈った中元

品物を包む袋には、平松オーナーの名刺を同封している。これにより、入居者と連絡先を交換できることもある。平松オーナーは「中元・歳暮をきっかけに、入居者と直接つながり、困り事をいち早く知ることができます。大きなメリットです」と語る。

 物件の管理は不動産会社に委託しているが、平松オーナーは建設会社の社長でもあるため、ある程度の設備の不具合には自ら対応することが可能だ。最近は入居者と「LINE」でつながり、室内設備や共用部の不具合の連絡があれば、すぐに対処している。

プレゼント

実家で取れたコメが年金受給者から喜ばれる

神戸市に築古物件11戸を所有する寛長衛オーナー(神戸市)は、不定期だが入居者にプレゼントを手渡ししている。

 賃貸経営を始めた14年からの取り組みだ。寛長オーナーは「入居者は家賃を払ってくれる大事なお客さまなので、還元の意味で始めました」と語る。

寛長衛オーナー(74)(神戸市)

 当初は、農業を営む実家で取れたコメ5kgやタマネギに、インスタントのみそ汁などをセットにしていた。入居者の中には年金や生活保護の受給者もいて、喜ばれている。近年はそれほどの量ではないが、今後もなるべく年に2回は渡していきたいという。そのほか、東京や福岡などで開催された「賃貸住宅フェア」に行った際には、現地で買ったお土産を持って入居者宅を訪問した。直接手渡しすることで「困り事はありませんか」とコミュニケーションを取るように心がけている。

▲寛長オーナーが贈ったコメ

 「『防御が最大の攻撃』という考えで長期入居の実現を目指しています。入居者に少しでも気に入ってもらえるように、今後もプレゼントを渡すことは続けていきたいです」と語る寛長オーナー。過去には、住み心地の良さを感じた長期入居者が親族を紹介してくれて、新規入居につながった例もあった。

(2024年11月号掲載)
次の記事↓
【特集】入居者の満足度を上げる 家主のアイデア集:③プレゼント3

一覧に戻る

購読料金プランについて