【特集】入居者の満足度を上げる 家主のアイデア集:③プレゼント3

賃貸経営入居者との関係づくり

プレゼント

共用部の不具合を知らせた人に野菜届ける

 浜松市に40戸を所有する大橋正紀オーナー(浜松市)は、畑を持っており、共用部の不具合を知らせてくれた入居者に自作の野菜をプレゼントしている。

 物件は妻と2人で自主管理している。自宅から車で5分の距離なので遠くはないが、隣接しているわけでもないため頻繁に共用部を巡回することができない。そこで、不具合が発生したら入居者に教えてもらえるようにしようと、約20年前から取り組み始めた。

大橋正紀オーナー(70)(浜松市)

 例えば、階段の踊り場の照明が切れたと電話をしてきた人に、夏場はキュウリやナス、冬場はハクサイやダイコンを手渡しして、連絡をくれたお礼を述べる。不在の場合は袋に詰めて添え書きを同封し、ドアハンドルに掛けておく。

 「仰々しくならない程度の量を渡します。お礼を伝えて、コミュニケーションを取ることで、次に不具合が発生した際に再び連絡してもらえるような関係性を構築することが目的です」(大橋オーナー)

▲大橋オーナーが届けたナス

 実際に、その後も不具合があった際には入居者からの連絡をきっかけに対処してきた。それが奏功してか、物件は築42年だが大きな問題は起きていない。入居者の3割は10年以上の長期入居だという。

 

ワンポイント解説

契約を誘引する景品の価格には上限がある

 契約を誘引するために入居者に渡す景品(プレゼント)には、景品表示法に基づいて、不動産業界で価格の上限が定められているので注意が必要だ。

 景品には、抽選やくじの「懸賞景品」と、契約者全員を対象にする「総付け景品」の2種類がある。懸賞景品は、取引価格の20倍または10万円のいずれか低いほうが上限となる。このとき、提供できる景品の総額は、この懸賞における取引予定額の2%以内となる。総付け景品は取引価格の10%または100万円のいずれか低いほうが上限となる。

 ここでいう取引価格とは、家主が景品を渡す場合だと、前家賃・管理費・礼金などを合わせたもの。仲介会社や管理会社が渡す場合は手数料となる。 

 ことぶき法律事務所(東京都新宿区)の塚本智康弁護士は「家主は、景品の価格にルールがあることを知っておきましょう。わからないことは、消費者庁や不動産業界団体などの相談窓口で聞くといいです」と語る。

総付け景品は取引価格の10%または100万円のいずれか低いほうが上限

 

ことぶき法律事務所(東京都新宿区)
塚本智康弁護士(46)

2001年中央大学法学部卒業、08年中央大学法科大学院卒業。09年東京弁護士会登録、同年ことぶき法律事務所入所。モットーは向上心。

(2024年11月号掲載)
次の記事↓
【特集】入居者の満足度を上げる 家主のアイデア集:④アンケート

一覧に戻る

購読料金プランについて