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築90年超の日本家屋をレンタルスペース化
レトロな雰囲気が撮影にマッチ
いせやほり
車の通りが多い環状7号線を少し入ったところに古風な門と蔵のある日本家屋がひょっこり姿を現す。レンタルスペース「いせやほり」だ。京王電鉄京王線代田橋駅から徒歩5分、東京都心の新宿にも近い場所に残るこの築90年超の建物は、2020年にレンタルスペースとしてオープン。それ以来、撮影や会合に利用されている。
ミッドフィールド(東京都杉並区)
田中和郎代表取締役(65)
「この建物はもともと、1927年に開業した『いせや堀質店』でした」と話すのはミッドフィールド(東京都杉並区)の田中和郎代表取締役。質店の創業者である堀實三氏が妻の祖父にあたることから、現在、いせやほりの管理・運営に携わっている。質店自体は79年に廃業。その後は、堀家の末娘・文子氏が茶道の稽古場として、また夫で画家の大津信久氏と共に制作活動を行う住居兼アトリエとして使われていた。だが、文子氏が2017年に、信久氏が19年に死去した後は空き家になってしまった。
敷地の広さは50坪ほど。東京都心に近いという立地を考えると、収益物件を建てるのが一番いい方法だったかもしれない。だが、堀家100年の歴史が生きる建物はできれば残したいと考えていた。「かつて叔父に建て替えを勧めたときに断られたことがありました。その経験も踏まえて建物を残す決断をしました」(田中代表取締役)
建物を何もせず残しておくわけにもいかず、民泊としての活用も考えた。だが、1年のうちで営業できる日数が限られることや、静かな住宅街ゆえに外国人観光客とのトラブルを心配し断念。最終的に採用したアイデアがレンタルスペースだった。
リノベーションに際して、1級建築士の資格を持つ友人を招いて意見を聞いた。やはり古い日本家屋で心配になるのは耐震性だが、友人は蔵はもとより自宅部分も頑丈な柱で支えられており、大きく手を入れる必要はないという判断だった。そのため、味わいのある柄入りガラスや雪見障子などはすべてそのまま残すことができた。
レトロな雰囲気が利用者に刺さると考えた一方で、快適性も重要視した田中代表取締役。少しでも冬の寒さを防ぐため、廊下を一度剥がし断熱材を入れ、その上から再度90年ものの味わいのある床板を張り直した。一方、トイレとキッチンはすべて新しいものに入れ替えた。残すべき古さとアップデートする場所を取捨選択した結果、平均稼働率は50%程度となった。
生前、信久氏は「この家を何とかしないともったいない」と話していたという。「壊されることなく、たくさんの人の出入りが生まれたこの家の姿を見て叔父も叔母も喜んでいるのではないかと思います」(田中代表取締役)
▲入口の植栽は一部伐採し、明るくした
(2025年1月号掲載)
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