連載第88回 見えている未来に向けて
高齢化は進む
2024年も間もなく終わる。年の瀬になると、1年が過ぎるのは早いと感じつつ、次の年、そしてその先の将来について考える。
この先については何が起こるかわからない。それゆえに不安になり、将来のことを考えると、期待感よりも不安感のほうが勝る人が多いのではないだろうか。
だが、はっきり見えている未来はある。わが国では高齢化が進み人口が減るということだ。少子高齢化による人口減少については、最近わかった話ではない。もう30年以上前から問題として挙がっていることであるため、「今さら」な印象を持つ人もいるかもしれない。それだけ、社会的に認識されていることであるにもかかわらず、多くの国民は「最後は国が何とかしてくれる」という期待を持ち、これらの大きな課題に対して目を背けてきたきらいがある。しかし、もう目を背けてはいられない。
「国は高齢者を支え切れなくなる」。こう話すのは、高齢者向けの生活サポート事業を中心に展開するMIKAWAYA(ミカワヤ)21(東京都荒川区)の青木慶哉社長だ。
日本の年間医療費は25年に約54兆円に達し、その約60%を高齢者が占めるという。40年になると医療費は約60兆円を超え、社会保障費全体は150兆円以上に拡大する見込みだ。しかも、月に1回以上病院や診療所に行く高齢者の割合は日本では6割に及ぶ。
さらに、年間介護費は、25年は約15兆円でGDP(国内総生産)比の2・3%を占め、40年には約28兆円で同比の3・1%まで拡大する。
多世代で地域を活性
MIKAWAYA21では、高齢者の孤独死も増えている中で「せめて誰かとつながることで孤独死を防ぎたい」という気持ちが事業のベースにある。一方で、高齢者といっても元気な人がいるのも事実。そこで、高齢者の労働力を使って、地域活性化のために活動しているのが、ジーバー(仙台市)の永野健太社長だ。
ジーバーの事業に弁当宅配事業を軸とした「ジーバーFOOD(フード)」がある。そこで働く人は例えば、高齢女性で「家族には自分が作る肉じゃががおいしいと言ってもらっている」というような人。そういうおふくろの味的な料理を売りにして、弁当販売を始めて、人手不足の食堂運営、さらに飲食店とのコラボレーションで地域を活性化している。高齢者ゆえに1日の数時間、各人の都合に合わせて働いてもらっているという。
こんな時代だからこそ、青木社長も永野社長も高齢者が孤立しない社会を目指し活動している。そして、永野社長は「高齢者が3人に1人になる2035年までに世界がうらやむ高齢社会をつくる」と語る。そんな話を聞いたら、高齢者は守るだけでなく、地域社会に活力を与えてくれる存在だと感じることができ、進む高齢社会ももっと前向きに捉えられるのではないだろうか。
永井ゆかり
(2025年1月号掲載)
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