著者インタビュー今月の一冊:間取りの正解

賃貸経営住宅設備・建材

ずっと快適に暮らせる間取りのコツがよくわかる!
間取りの正解

収納と家具配置への配慮が暮らしやすさ実現

──新築戸建てとリフォーム、どちらの設計依頼が多いですか。
 現在は、新築とリフォームの割合は1対2です。著書やホームページを見た人、紹介や口コミによる依頼も多くあります。今だけでなく10年後、20年後も快適に過ごせる間取りを考えて設計しています。「住んでみて、暮らしやすさを実感した」と言われることも多く、そうした設計上の配慮が依頼につながっていると思います。

──暮らしやすい間取りとはどのようなものですか。
 実は人間の生活行動、つまり食事や身支度、掃除、洗濯など生活上でやることは、それほど大きく変わりません。基本的な生活行動がしやすく、さらにそれぞれの家族のライフサイクルに対応できる間取りが暮らしやすいと思います。キッチンが家族や夫婦で使えるように回遊できたり、寝室を子どもの成長に合わせて仕切って使えたりといった具合です。これは、賃貸住宅の間取りでも同様です。

──築古の賃貸住宅の間取りを変更するのは難しいことが多いです。
 収納の見直しと水回りの快適性を上げると魅力ある住まいに変わります。玄関にコート掛けのフックやキッチン正面に調理器具をかけるバーを取り付けるだけでもいいです。費用もそれほどかかりませんし、入居希望者が快適な暮らしを想像しやすくなります。アクセントクロスをクローゼットの中に貼るなどすれば意外性が生まれ、家主の遊び心も伝わります。

──ご自身の賃貸住宅ではどのようなリフォームをしたのですか。
 1階が2LDK1戸、2階は1LDK2戸の物件を引き継ぎ、リフォームしました。高断熱化と収納スペースの確保はしっかり考えました。また2LDKにはファミリー層の反応が良い食器洗浄機を設置しています。

──収納と水回り、家具の位置が重要なのですね。
 洗面所にはたっぷりの収納を設置しました。家事や片付けがしやすい場所に収納がある間取りは、住み心地の良さにつながるのです。また、家具や設備の配置を想定して設計すれば、「壁が少なすぎてソファが置けない」「コンセントの位置が良くない」といったこともありません。小物が多いキッチンやダイニング、洗面所の収納を充実させ、ベッドやソファ、食器棚といった大型家具の置き場所に困らない間取りを考えるといいでしょう。

著者:水越美枝子
出版社:エクスナレッジ
価格:1980円(税込み)

[概要]
1級建築士として住宅設計からインテリアコーディネートまで手がける著者が、300件以上の事例から、さまざまなライフスタイルに合わせて快適に、心地よく暮らせる間取りを紹介。住みやすい間取りにするために押さえておくべきポイントや工夫の仕方などについてわかりやすく解説している。賃貸住宅を新築する際や、築古物件をリフォームする際にも参考になる一冊だ。

著者プロフィール
水越美枝子(みずこし・みえこ)

茨城県生まれ。一級建築士。キッチンスペシャリスト。1982年、日本女子大学住居学科卒業後、清水建設に入社し商業施設、マンションなどの設計に携わる。98年に一級建築士事務所アトリエサラを、秋元幾美氏と共同主宰。建築デザインからインテリアコーディネートまで、トータルで住まいづくりを提案している。手がけた物件は約300件以上。

(2025年1月号掲載)

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