Focus 〜この人に聞く〜:データ活用で効率化

賃貸経営トレンド

データ活用で推進する業務の効率化
不動産業界のデジタルインフラに

商業用不動産のデータベース「estie(エスティ) マーケット調査」を提供するestie(東京都港区)は、賃貸住宅向けのデータベース「estie レジリサーチ」の提供を2024年10月に開始した。「データを活用することで、より良い不動産経営を支援したい」と話す平井瑛代表取締役に話を聞いた。

estie(東京都港区)
平井瑛代表取締役(33)

――御社はオフィスビルのデータベース事業で実績を持っていますね。

 全国8万棟40万フロアのオフィス物件のデータベースであるestie マーケット調査を19年にリリースしました。図面や竣工年などの物件情報や、募集賃料、稼働率などを任意の条件で検索し、調査することが可能です。特定のエリアの物件情報を瞬時にグラフ化する機能もあるので、オフィス物件の取得・開発の検討や物件運営の効率化に役立てることができます。ユーザーの中で特に利用が多いのは大手デベロッパーやJ–REIT(リート)運用会社です。一方で、1都市のみで展開している地域の不動産会社や、所有物件が少ないオーナーにも利用されています。

――起業するまでの経緯を教えてください。

 起業前は三菱地所(東京都千代田区)で働いており、海外投資の仕事に携わっていました。海外の不動産マーケットに関わる中で、アメリカでは不動産テックの活用が30年以上前から行われていることを知りました。一方で日本ではまだアセットオーナーが利用できるテックサービスが少なく、日本とアメリカにおけるデータ活用に大きな差を感じたことが起業のきっかけです。

――今回市場参入したestie レジリサーチはどのようなサービスですか。

 賃料設定時や物件を取得する際に参考となる情報をデータベース化したサービスです。全国約220万棟の賃貸物件の居室ごとの賃料や過去5年以上の賃料推移、稼動率、住宅設備の情報などを知ることができます。賃貸物件のマーケットを調査する際、不動産会社やオーナーはこれまではポータルサイトを見てマーケットを把握することが多かったように思います。十分な情報が得られなかったり、調べるのに時間を要したりと、業務負荷が重いことが課題でした。

 賃貸住宅は物件数が多く、一つの物件に関する情報量が多いことも特徴です。住宅探しにおいては「東京タワーが見える」「道路が広い」など情緒的な価値も判断基準となります。賃貸領域の調査業務の精度向上や業務効率化には、データの充実と多角的に分析できることが重要だと感じ、estie レジリサーチを開発しました。

――今後の目標を教えてください。

 24年10月に28億円の資金調達を行いました。M&A(合併・買収)やAI(人工知能)を使った技術に積極的に投資を行い、データの領域の拡大とUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上を目指します。取り扱うアセットもホテルや商業施設などに拡大予定です。今後も散在するデータの整備を行い、すべての不動産におけるデジタルインフラになっていきたいです。
(吉原悠)

平井瑛代表取締役 プロフィール
1991年、福井市生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱地所に入社。アメリカ、イギリス、東南アジアなどの海外市場における不動産投資・運用に従事。その後、東京を中心とするオフィスビル事業を経験した。2018年12月にestieを設立。

(2025年 2月号掲載)

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