建築基準法第12条に、所有者は建物を維持・管理する義務を負うことが定められている。定期報告とは、建物や設備の維持・管理のための点検や調査をしてそれを報告することだ。
1.定期報告は家主の義務
特定行政庁から通知が届き、定期報告12条点検(定期報告)のタイミングを把握するオーナーもいるだろう。まず定期報告の概要について押さえておきたい。テックビルケア(大阪府摂津市)の茶橋昭夫社長に話を聞いた。
テックビルケア(大阪府摂津市)
茶橋昭夫社長(43)
23年に定期報告対象となる建物が拡大
劇場や病院といった人が集まる建物や防火設備、エレベーターなどは国が政令で一律に定期報告の対象と定めている。このほか、実情に応じて特定行政庁が独自に定期報告の対象を指定することができる。つまり、同じ建物であっても、立地によって定期報告の対象となったりならなかったりするということだ。
特定行政庁の判断で指定できる建物の条件は政令で定められているが、2023年の政令改正により、特定行政庁が指定できる範囲が拡大。今まで定期報告の対象とされていなかった共同住宅も、対象となる可能性が出てきている。
特定行政庁が定期報告の対象として指定できる建物が、3階以上かつ延べ面積が200㎡を超える小規模事務所などまでに拡大。この改正は、21年に発生した大阪・北新地の心療内科クリニック火災がきっかけとなった。焼損床面積は約25㎡にとどまったが、死者26人を出した。
定期報告における 検査・調査は4種類
定期報告で行う検査は①建築設備定期検査②特定建築物定期調査③防火設備定期検査④昇降機(エレベーター)定期検査の四つ。
①建築設備定期検査で点検する設備は、換気設備や排煙設備などだ。②特定建築物定期調査は、屋上や外壁など建物全体を調べる。③防火設備定期検査では、防火扉や防火シャッターが通常どおりに動くかどうかをチェックする。④昇降機定期検査では、エレベーターが正常に稼働するかを確認するものだ。
(2025年 2月号掲載)
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不具合放置で 所有者責任が問われる 定期報告で安全確保②
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