著者インタビュー今月の一冊:遺品整理業の使命

賃貸経営賃貸管理

遺族の心を整理する 遺品整理業の使命

遺族が次のステップへ進むお手伝い

─月にどのくらい遺品整理の依頼を受けているのですか。

 現在は、愛知県と関東エリアを中心として月に40~50件ほどの遺品整理の依頼があります。そのうちの約半数が賃貸住宅での作業です。葬儀社や管理会社、行政書士事務所などからの依頼が多いですが、家主から直接依頼されることもあります。

─賃貸住宅での作業時はどんな点に注意していますか。

 集合住宅では、共用部のどこを使ってもいいのか確認が必要になります。エレベーターの使い方から養生テープの種類まで指定されることもあります。管理会社や家主が事前に張り紙などで、作業日時を入居者に告知してくれたところは作業しやすかったです。

─遺品整理事業者とのトラブルを聞くことがあります。

 業界内に作業後に追加代金を不当に請求したり、遺品を無断で持ち出したりなど犯罪まがいのことをする会社があるのは残念です。

 当社では徹底した人材育成をしておりトラブルに発展することはほとんどありません。ただ、急な予定変更や契約外の作業依頼で困ってしまうことはあります。

─悪徳業者を見分けるポイントはありますか。

 例えば、一般廃棄物収集運搬業許可や古物商許可など必要な許可を取得していない、料金が著しく安い、ホームページに情報がほとんど掲載されていないといった会社には注意が必要です。可能であれば相見積もりを取るといいでしょう。その際の電話対応の印象も比較してみてください。また依頼する建物の近くに事業所があるかどうかもポイントです。地元に根差している会社であれば、付き合いのある不動産会社や管理会社などから情報を得ることができます。

─業界団体の理事も務めていますね。

 一般社団法人心結(兵庫県伊丹市)家じまいアドバイザー協会で理事を務めています。遺品整理は遺族の悲しみを整理し、次のステップへ進むお手伝いをする仕事です。まずは勉強会やセミナーを開き、業界全体のモラル向上に努めているところです。また不動産会社と提携し老人ホームの入居者向けセミナーも行っています。そこでは、生前から整理・対策しておくことを提案しています。

著者:荒津 寛
出版社:幻冬舎
価格:1760円(税込み)


【概要】
比較的新しいビジネスだといえる遺品整理事業。高齢化や核家族化の影響から遺品整理を専門の事業者に依頼する人が増えている一方、事業環境や法の整備が追い付いていない状況にある。同書では、そうした業界全体のサービス品質の向上とイメージアップに努めてきた著書が、これまでの事業経験を基に業界の現状から問題点、さらに今後の展望まで語った。

著者プロフィール
荒津寛(あらつ・ひろし)

1976年、大阪府生まれ。ZEROPLUS(ゼロプラス)の代表取締役、一般社団法人心結の理事を務める。不況の影響で就職先の建設会社が倒産したため、2008年に現在の拠点である愛知県で産業廃棄物関連の会社に就職。15年にZEROPLUSを設立し、遺品整理、不用品の片付けなどを手がける。17年、フィリピンにオークション会場を開設。生前整理・断捨離セミナーの講師としても活躍中。

(2025年 2月号掲載)

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