【連載】家主版 転ばぬ先の保険の知識:3月号

賃貸経営保険

第43回 変わりゆく損保業界のスタンスについて考える③

保険契約の引き受け制限①

 火災保険の収支が悪化の一途をたどっているという現状を、この連載でも度々伝えてきました。日本の火災保険事業単独の収支は、14年連続の赤字を計上しています。

 損害保険業界は、これを解消するためのさまざまな取り組みを行っています。保険料率の引き上げ、保険期間の短期化、損害調査の厳格化による保険金支払いの引き締めなど、どれもわれわれ消費者には厳しい施策だといえます。

 しかし、これだけでは慢性的な赤字の解消には程遠く、別の観点からも保険の収支を改善するための新たな仕組みづくりが始まっています。

築古建物に導入された 保険料割増制度 

 従来は築10年以内の新しい建物に対して保険料を優遇する割引(建築年割引)のみが採用されていました。しかし、近年では建築年数に応じて段階的に保険料がアップしていく割増制度も導入されています。これは、築年数が古い建物ほど耐火性能が劣ること、また経年劣化・老朽化の影響により災害被害が拡大しやすいという、統計上のデータに基づいて導入が決定されたものです。そのため、これから順次満期を迎える火災保険契約は、契約時よりも築年数が進むため、更新後にはほぼ全件保険料が上がることになります。

 今のところ、リフォームやリノベーションによって建物の状態が改善されたとしても、それが保険料に反映される制度はありません。経過年数による割増制度が導入されたことで、火災保険料の負担が徐々に重くなっていきます。賃貸物件を多く、長く所有する賃貸不動産事業者にとって、とても厳しいものだと言わざるを得ません。

超築古建物で本格的に制度化 契約引き受け制限

 建築後40年以上経つような、いわゆる超築古建物の火災保険の引き受け制限が本格化されました。住宅物件については、かつては築年数に関わりなくすべての契約を引き受けていましたが、前述のような理由から、各社とも契約引き受けに一定の制限を設けています。

 おおむね建築後40年以上(保険会社によっては50年以上)と建築年月が不明な建物を対象とし、建物の現況写真や専用チェックシートの記入・提出(またはアプリに入力)が要件となります。引き受ける場合であっても、高額な免責金額(10万円以上)の設定、保険期間は1年に限定、破損・汚損条項、費用保険金特約などの支払い発生頻度が高いと思われる補償を不担保とするといった、事故発生リスクを低減するための条件が付けられます。

火災保険に入れない事態 賃貸物件で増える可能性あり 

 築年数によって火災保険の引き受けを制限する制度になった以上、保険会社の条件に合致する建物状態を維持しておかない限り、超築古建物に火災保険をかけ続けることはできなくなります。

 また超築古建物を新規購入する場合も、火災保険の引き受け基準に合致していない状態のままであれば、修繕工事を完了させるまでは火災保険に入れないことになります。

 火災保険の契約引き受け申請をしても、その可否や引き受け条件の決定にはある程度の時間を要します。そのため、新規購入する超築古建物の場合には、所有権移転の前にこれらの手続きを行うことが必要になります。つまり、他人が所有する建物の調査や写真撮影をすることになるのです。

 無用なトラブルを避けるためにも、事前に売主側の承諾を得ておきましょう。どうしても決済前に調査を行えない場合、決済後しばらくの間、無保険期間が生じることになります。売主の火災保険契約をそのまま譲渡(名義変更)してもらうなど、無保険期間を生じさせない対策を考えるべきではないでしょうか。

解説
保険ヴィレッジ 代表取締役
斎藤慎治氏

1965年7月16日生まれ。東京都北区出身。大家さん専門保険コーディネーター。家主。93年3月、大手損害保険会社を退社後、保険代理店を創業。2001年8月、保険ヴィレッジ設立、代表取締役に就任。10年、「大家さん専門保険コーディネーター」としてのコンサルティング事業を本格的に開始。

(2025年3月号掲載)

一覧に戻る

購読料金プランについて

アクセスランキング

≫ 一覧はこちら