【連載】眠っているお宝 目の付けどころ:vol.3

相続相続財産の評価額

プレミア切手

 1950年代から60年代にかけて、日本では切手ブームが巻き起こった。そのため、当時収集された記念切手などが家の中に眠っていることが珍しくないだろう。

 インターネットが主要な通信手段となり、切手の需要は下がっているが、高値が付くものもある。日本切手でいえば「見返り美人」(菱川師宣画)と「月に雁(かり)」(歌川広重画)だ。また1871年に日本で初めて発行された「竜文切手」や、翌年に発行された「竜銭切手」と「桜切手」なども高額切手として知られている。

偽物への注意が必要な切手も

 外国切手でお宝といえるのが、1966年から76年にかけて起きた文化大革命時代の中国切手だ。当時中国では切手の持ち出しやコレクションを禁止しており、切手は外貨獲得のために発行された。日本には切手コレクターが多かったので、中国切手が大量に流入している。

 特に人気が高いのは「毛主席の長寿を祝う語録」「毛主席の最新指示」のシリーズや「全国の山河は赤一色」だ。全国の山河は赤一色は、図柄の赤い地図の台湾だけが塗り残され白いままであるという図案ミスが発覚し、発行から半日程度で回収された。そのため世界に数百枚しか出回っておらず希少性が高い。

 2000年代に入ると中国経済が発展し切手が投資対象となり、中国切手ブームが起こった。本郷美術骨董館(東京都文京区)には、その頃から中国切手を買いに中国人バイヤーやコレクターが訪れているという。

 「10年ほど前、あるお宅に出張買い取りに行ったところ、その家のおばあさまが夫の遺品だと言って切手アルバムを見せてくれました。その中に全国の山河は赤一色があったのです。少し色あせていたので、500万円で買い取りさせてもらいました」と同店の染谷尚人代表は高額買い取りの経験を語る。故人は中国旅行の際に100円程度の定価で購入していたそうだ。

 今、中国経済は停滞しているため、海外移住を考える富裕層が多い。彼らが資産を有事の際に持ち運びしやすい動産に変える動きがある。切手ブーム時より値段は下落傾向ではあるが、こうした理由から購入需要はあるといえる。

 切手の査定ポイントとしては、未使用のほうが望ましい。また保存状態が良く、色あせや折れ、汚れがない紙質の良いものに高値が付く。ただし、中国切手は偽物が大量に流通しており、偽物だった場合は値段が付かない可能性もある。「お宝では?」と思った切手は専門の事業者に査定を依頼してみよう。

お話を聞いた鑑定のプロ

本郷美術骨董館(東京都文京区)
染谷尚人代表

50年の実績を持つ美術・骨董商の2代目。27人の鑑定士を抱え、官公庁・国税庁から依頼された鑑定・査定業務も行う。

■店舗情報
美術品・骨董品の取り扱い実績では日本最大級。国内で16支店、中国遼寧省で1支店を展開。

(2025年 5月号掲載)

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