第1部 次世代不動産経営のための不動産学を実学から学ぼう
第1講『実学の不動産学から、次世代人財を創る人たち』①
不動産業界において大きな変化が起こりつつある。そうした中、「不動産オーナー井戸端ミーティング」を主宰する𠮷原勝己オーナー(福岡市)が中心となり、貸し手と借り手、そして地域にとって「三方良し」となる、持続的でブランディングされた不動産経営を目指す勉強会を有志で開催している。
当連載では、建築・デザインを学ぶ学生たちと全国から集まったプロフェッショナルが一緒に受講する場として、九州産業大学建築都市工学部で行った全14回の「不動産再生学」と題した寄附講座を紹介。今回は「不動産再生が持つ社会的意義」を中心に、𠮷原オーナーの講演をレポートする。
新たな可能性を拓く不動産再生
吉原住宅(福岡市)/スペースRデザイン(同)
吉原勝己代表取締役

講義の進め方と学び方
私が考える不動産再生の最も大きな可能性は、空き家や空きビルという“使われていない”資源を活用して、新しい価値を生み出すことです。新築不動産がメインで動いている現在の業界の中で、私は、その流れとは違った新しいアプローチがこれから大きなビジネスとまちの未来を生み出すと感じています。例えば、古い建物を再生し、地域の特色を生かした空間にすることで、その地域全体の価値が高まるのです。この取り組みを通じて、私たちはより多くの人々に影響を与え、地域に必要とされる存在になれると信じています。
私の講義では、知識をただ詰め込むよりも、皆さんが自分で考える力を養うことを重視しています。スマートフォンやパソコンで情報を調べながら学ぶことを推奨しています。それは、知識が簡単に手に入る今の時代において、どのようにその情報を生かし、自分の考えを深めていくのかが重要だからです。学生にとってはどう生きるかを考えるため、プロの皆さんにとっては次のステージを考えるための機会です。これから始まる私たちやゲストの皆さんの取り組みを見聞きして、自分がどんな道を歩むべきかをしっかりと考えてほしいと思っています。
この講座では、単なる理論ではなく、実際に不動産再生を行っているプロフェッショナルたちの体験やアプローチを学ぶことができます。私が尊敬している現場のプロフェッショナルたちが、どのように苦労して成功を収めたのかを語ってくれます。また後半では、大きな企業や行政などの中でどのように不動産再生が進められているのか、大組織の中で動かす力を持つ個人の視点を学びます。こうした実践的な話を通じて、皆さんには現場で悩まれたときにこそ役立つ視点と考え方を身につけてほしいと思います。
不動産再生が持つ「社会的意義―経済的意義」とビジネスとしての成り立ち
私が不動産再生に取り組んでいる理由の一つは、それが社会に対して非常に大きな意義を持っているからです。古くなった建物や使われていない空間を再生することで、その地域に新たな価値を与え、住む人々や働く人々の生活の質を向上させることができます。このプロセスが、地域活性化の鍵になると私は信じています。私自身、福岡で数十棟の物件を再生してきました。その結果、地域の風景が変わり、そこに住む人たちが生き生きとした日々を送るのを見ており、それが何よりの喜びです。
もちろん、社会的意義だけでは不動産再生を持続的に行うことはできません。経済的に成り立たなければ、どれだけ社会的に良い取り組みをしていても続かないからです。しかし、不動産再生は家賃収入という安定した経済基盤を使うことで、社会的貢献と経済的成功を両立させることが可能です。私は、自分が不動産再生を通じて利益を上げることができれば、それをさらに多くの雇用や社会貢献事業に回すことができると考えています。経済的成功があってこそ社会的な活動も続けられるということを、参加者には強く伝えたいです。
専門家としての成長とネットワーキング
新たなプロの精神としての不動産再生
私自身が過去の経験から学んだことは、現場で活躍している多くの専門家たちとつながりを持つこと(ネットワーキング)の重要性です。この講座に登壇するゲストは、まさにその道のエキスパートであり、実際に不動産再生を通じて地域を変えてきた人たちです。皆さんにもぜひ、こうした人々と積極的にネットワーキングをし、自分自身の考え方を広げてほしいと思います。彼らの話を聞くことは、学生やプロに限らず皆さんの将来にとって大きな財産になるはずです。
不動産再生には、ただの修復ではない「プロ」の精神が求められます。単に建物を直すだけでなく、その建物がどのように地域に溶け込むのか、どんな新しい価値を生み出すのかを考えることが必要です。従来のプロフェッショナル像は、専門に特化したものが多かったのですが、現代ではデザインやコミュニティーの力を生かした新たなプロフェッショナル像が生まれつつあります。私もその一員として、この分野に新しい価値を加えていきたいと考えています。

不動産再生が切り開く未来
私がこの講義で最も伝えたいことは、皆さんが学びを通じて「新たな自分の可能性」を見つけていくことです。不動産再生は社会に貢献できるだけでなく、経済的にも成り立つビジネスです。この分野に興味を持っている皆さんが、どうすれば自分自身を成長させ、実際に地域や社会に貢献できるのかを一緒に考え、歩んでいきたいと思っています。
不動産再生は単なる建物の修復ではなく、地域全体を活性化させる力を持っています。この分野に取り組むことは、社会的にも経済的にも大きな意味を持ち、参加するすべての人にとって意義深い経験となるでしょう。私の目指すところは、これからの不動産業界で新しい価値を生み出し、皆さんと共に次世代の不動産再生をベースにした経営をつくり上げていくことです。この講義を通じて、みなさんがその一歩を踏み出すきっかけになればうれしく思います。
(2025年4月公開)
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電子版:不動産再生学講座レポート第1講② by次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー
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