【特集】思い込みを捨て、入居条件は国籍以外で決める

賃貸経営入居者との関係づくり

<<入居前が肝心 トラブルを防ぐ 受け入れ方法>>
外国人受け入れを成功させるには、地域の環境や物件によって方法は異なる。不動産会社や不動産オーナーに実例を紹介する。

国籍以外の入居条件を定める
思い込みを捨てて受け入れる

鈴木康成オーナー(千葉県鎌ケ谷市)


 東京都、神奈川県、千葉県と静岡県に、個人と法人を合わせて34戸所有する鈴木康成オーナー(千葉県鎌ケ谷市)。1994年に中国人留学生を初めて受け入れて以来、ブラジル、中国、フィリピン、ベトナム、スリランカ、韓国、タイ、インドネシア、内モンゴル自治区など多くの国の人を入居させてきた。現在の入居者も3分の1から半分ほどが外国人だ。鈴木オーナーは「外国人入居者に対する偏見や恐怖は、実際の経験や事実に基づかない思い込みによるものが多いと思います」と話す。

 かつて静岡県磐田市に2棟の物件を所有していた鈴木オーナー。近くにはヤマハ発動機の工場があったため、入居者の多くがそこで働く派遣社員だった。とりわけブラジル人が多かったという。4~5年日本に住んで母国に帰るというパターンが大半で、入居中のトラブルは日本人と変わりないかそれよりも少ないくらいだったと振り返る。

 「例えば、ごみ捨てルールは一度注意すればすぐに改善されます。日本人と異なり『ここを追い出されたら住む場所に困る』という意識があるからだと思います」(鈴木オーナー)

在住歴や友人の有無を尋ねトラブルを未然に防ぐ

 日本人でも外国人でも「トラブルを起こさない入居者」に入ってもらうのが肝要だ。鈴木オーナーの場合、外国人については、以下のような条件をあらかじめ仲介会社に伝えていた。
 ①日本に住んである程度たっている
 ②正規の仕事に就いている
 ③家族がいる
 ④その物件の入居者とつながりがある

 ①~③については、日本の文化を知っていることと、生活の地盤が出来上がっているので、犯罪でお金を稼ぐ可能性が低いことが理由だ。特に③では、子どもがいる場合は、子どもが日本の学校に通い、ある程度日本語が通じるためコミュニケーションの助けになる。④は入居前にどんな人物であるかを知ることができる点と、万が一夜逃げした場合に本人を探すことができる点で重要だという。

 そのほか、「異なる国の人が同じ物件に入らないようにすると、より安心だ」と鈴木オーナーはいう。理由は、お国柄の違いから入居者同士の相性が合わないことがあるからだ。

 「外国人というと、見た目が日本人と違うことや言葉の壁によるトラブルを想像してしまうと思いますが、実際は外国人であるがために起きる問題は少ないのです。周囲の家主が外国人を敬遠していたことでかえって物件の差別化ができて、賃貸経営にも好影響を与えています」(鈴木オーナー)

AIを活用
 昨今話題の生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を使って外国語による注意喚起看板を作っているのは協和開発(香川県観音寺市)だ。
 「屋外用の注意喚起看板のデザイン」「使用する文章は『このコンテナにゴミを捨てないでください。特にたばこの吸い殻を捨てるのは厳禁です』」「文章は日本語・中国語・ベトナム語・クメール語の4カ国語で記載して」「文章の内容に似合うイラストを添えて」と指示して出来上がったのが右記の画像だ。三谷洋介社長は「たとえ外国語ができなくても、ツールを使えば容易に外国語で書かれた看板を作ることができます」と話す。

 

(2025年8月号掲載)
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