賃貸住宅を契約する場合、入居者は万一家賃が支払えなくなった場合に備えて連帯保証人を立ててきました。
最近では新規の賃貸契約において保証人の代わりに、家賃債務保証会社を使用するケースが増えました。今やその割合は8割にも達しています。
入居者にとっては、家賃債務保証は一定の保証料金を支払うというデメリットはありますが、一方で保証人がいない場合でも賃貸住宅を借りられるメリットがあります。家主にとっては家賃滞納のリスクが減るのが大きな魅力です。
家賃債務保証制度の仕組みや支払う料金、家賃滞納が起きた場合の流れについて家主と地主編集部がまとめました。
家賃債務保証とは
家賃債務保証とは
家賃債務保証とは、保証会社が入居者の保証人に近い役割を担うビジネスのことです。
入居者が何らかの事情で家賃を滞納してしまった場合、保証会社が入居者に代わって滞納した家賃分を家主に支払います。
家賃を立て替えた保証会社は、債権を回収するため、家主に代わり入居者へ滞納分の家賃を請求する流れとなります。
家賃債務保証の契約は、賃貸借契約を行う際に、同時に行われます。
背景
家賃債務保証を利用するケースが増えた背景の一つとして、2020年4月の民法改正が挙げられます。家主と入居者が賃貸借契約を結ぶ際に個人の保証人を立てる場合は、極度額(保証の上限額)の設定が必須となったのです。
極度額は家賃の約1年分が目安ですが、保証人から「払える額ではない」と契約を拒否される可能性もあります。
また、家族関係の希薄化や高齢化により、保証人を頼みたくない、頼める人がいないというケースも増えています
誰かに保証人を頼むより、「初期費用が多くかかっても保証会社を利用したい」と考える入居者が多くなっていることがわかります。
近年、新規の賃貸契約において8割を占めるようになってきています。
家賃債務保証業者に支払う料金と支払方法
家賃債務保証業者に支払う料金と支払方法は以下の通りです。
支払う料金
一般的に、管理委託している住宅の場合は管理会社が保証契約の窓口となり、家主が自主管理を行っている住宅の場合は仲介会社が窓口となります。
書類に不備などの問題がなければ、審査にかかる期間は通常1~2日です。契約が無事に成立すると、入居者は保証会社に保証料を支払います。
家賃債務保証会社に支払う保証料は、月額家賃の30~50%で、保証料の支払い方法は賃貸借契約時に決定します。
家賃債務保証制度は、家主側にとっては入居者を獲得しやすいサービスとなっており、契約時から退去まで、手間やコストが発生することは基本的にありません。
一方、入居者は保証人がいなくても賃貸借契約が可能となるメリットがありますが、保証会社を利用することで初期費用が多くかかってしまうというデメリットがあります。
支払い方法
家賃債務保証の支払いは保証会社や商品によって異なります。
入居者が保証料や支払い方法を選ぶというより、保証会社の代理店となっている不動産会社がどんな商品を選んで提案しているかによって決まります。
以下の2種類の支払い方法があります。
- 一括払い方法
- 入居期間中に毎月一定額を支払う方法
「一括払い方式」
一括払い方式は、契約時に家賃債務保証会社に保証料を支払った後は、1年ごとの契約となり、更新料として年1万円を支払うことが多いようです。
「入居期間中に毎月一定額を支払う方式」
所定の保証料を家賃債務保証会社に最初に支払った後、家賃の1~5%を毎月支払うというケースもあります。
家賃滞納が起きた場合の2種類の仕組み
家賃債務保証には二つの仕組みがあります。その内容と流れについて解説します。
代位弁済型
家賃の滞納が発生すると、一定期間内に管理会社(家主側)が保証会社に報告し、保証会社から補填してもらいます。この方法を代位弁済型といいます。
収納代行型
収納代行型とは、家賃は入居者から保証会社へ毎月支払い、保証会社から管理会社(家主側)へは滞納の有無にかかわらず入金されます。
滞納が発覚した際に、保証会社に代位弁済請求をしなくてもいい利点があります。
収納代行型では、入居者が金融機関に開設されている信託口座に直接振り込む形にしている保証会社もあります。万が一、保証会社が倒産しても、信託口座は保護されるからです。
家賃滞納発生時の流れ
実際、家賃の滞納が発生した際の流れはどうなるのでしょうか?
①催促を行う
原則として、滞納が発生すれば賃貸借契約の不履行となりますが、いきなり解除をすることはできません。まずは電話連絡や書面の送付、訪問などで督促を行います。
代位弁済型の場合は、保証会社が定める期限内に家賃の代位弁済請求を行います。請求前は、家主や管理会社が督促を行うこともありますが、請求後は保証会社が督促します。
収納代行型は、保証会社が立て替えているため、督促は最初から保証会社が行います。
②明け渡し訴訟を見据えた催告を行う
滞納から2~3カ月経過した場合は、1~2週間の期限を設け、「期日までに家賃を支払わない場合は賃貸借契約を解除する」と書類で催告します。
一般的に、家主と保証会社との保証契約では、家主の「協力義務の条項」が設けられています。催告を行ったにもかかわらず、入居者が家賃を支払わなかった場合、滞納発生から3カ月が経過し次第、明け渡し訴訟が行えるよう家主に協力を仰ぐことができます。
滞納から3カ月という期間は、賃貸借契約解除の根拠となる「家主と入居者の信頼関係が破壊されたかどうか」の目安となります。
③合意解約か、決裂した場合は明け渡し訴訟を行う
合意解約の場合は滞納分の全額を受け取ります。分割により一部回収や未回収となった場合は起訴します。
明け渡し訴訟とは、家賃を長期にわたり滞納したり、ペット禁止の住宅で犬や猫などを飼ったり、契約者でないものが住宅を占領するなどの行為があった場合、家主は入居者や不法占拠者に対して部屋の明け渡しを求めて裁判を行うことができるというものです。
多くは法廷ではなく当事者や代理人同士の話し合いで解決を試みますが、滞納が続いたり和解の取り決めが履行されなかったりした場合、退去の強制執行が可能になります。
④判決が確定し、明け渡しが確定するか強制執行が行われる
判決が確定し、明け渡しが確定するか強制執行が行われます。
まとめ
家賃債務保証とは、入居者が、親族などに連帯保証人になってもらうことができない場合に、家賃債務保証業者に保証料金を支払うことにより保証してもらうサービスです。
家主にとっても、入居者の家賃滞納リスクが無くなるのでメリットがあります。国土交通省では家賃債務保証の適正化を図るために登録制度を設けています。
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