【連載】実録 家主が挑んだアスベスト訴訟 第2回準備編

法律・トラブル業者とのトラブル

第2回アスベスト訴訟準備編

2020年6月に受けた弁護士からのアドバイスにより、本当にアスベスト(石綿)が含有されているのか確認するため、調査会社を探す必要が出てきました。

インターネットで検索して調べてみると、私が住んでいる近所に調査してくれる会社がありました。

しかも、サンプル採取は自分で行うため、費用は1サンプルあたり約2万円と大掛かりな調査と違い安価です。

次に調査箇所ですが、石綿含有成形板やそのほかの建材に含まれている可能性が高いものとして、「スレート」「外壁」「キッチンパネル」「コンクリート板」「石こうボード」「軒天ボード」「ユニットバス」「塗料」「接着剤」などが挙げられます。

◦多様な方法でサンプル採取

スレートのサンプル採取は、さすがに高所に上がる手段は持っていないので、工事事業者に依頼しました。

外壁(塗料含む)とユニットバスは、ちょうど給湯器の追いだき対応への工事で穴を開ける予定があったため、工事の立ち会いを行って採取しました。キッチンパネル・コンクリート板・石こうボード・軒天ボードは、目立たないところを自分で削り採取しました。

これらのサンプルの分析を調査会社に依頼した結果、スレート、キッチンパネル、コンクリート板、軒天ボードからアスベストが検出されたのです。この報告書を基に今度はアパートを建てた大手建設会社に、交換工事の見積もりを依頼しました。

その結果、この物件はアパートが同一敷地内に6棟立っていることもあり、約5300万円の見積もりが提出されました。これが請求金額の根拠の基本となりました。

◦賠償金の計算方法

実際に工事を行うとなると、建設会社、管理会社、入居者との調整などの費用が発生するので、一般管理費として約14%上乗せします。

この一般管理費は民間の工事会社同士では相場基準がないため、いくら請求すべきか悩みましたが、公共事業の価格だった場合の基準を利用しました。

また、仮に賠償金が手に入ることを想定すると、該当物件は法人名義であるため、損害賠償金は雑収入あるいは特別利益として計上することになります。

そのため、法人税が発生し、実質金額の目減りしてしまう分を約34%上乗せしています。

この段階で、調査会社からの証拠を理由に売主に賠償請求するよう売買仲介会社に一度依頼し、仲介会社・売主に対して筋を通します。

万が一訴訟を回避できれば、それが一番良いのですが、売主側も当然突っぱねてきました。

そのため、損害賠償請求訴訟では大体認められている訴訟費用10%をさらに上乗せし、総額約1億円弱を請求する訴状を20年12月に裁判所に提出しました。

こうして地獄の訴訟生活がスタートすることになったのです。

 

多喜裕介オーナー

32歳で不動産賃貸事業を始め、34歳で独立した元サラリーマンの大家。現在、アパートを中心に15棟112室と太陽光発電所2基を所有。著書に「田舎大家流不動産投資術 たった3年で家賃年収4700万円を達成した私の成功法則」(合同フォレスト)や、「田舎大家流『新築×IoT』不動産投資術 新築アパートはスマートホームで成功する!」(セルバ出版)がある。

(2024年6月号掲載)

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