【特集】キャッシュレス化で変わるコインパーキング特集

土地活用パーキング

全国で164万車室、500㎡未満は10年で倍増

コインパーキング業界が今、大変革の時代を迎えているという。スマートフォン決済の普及で集金業務の負担が軽減し、駐車スペースが数台しか取れない土地でも活用できるようになった。コインパーキングの最新状況について紹介する。

 土地活用の一つとして普及してきたコインパーキング。一般社団法人日本パーキングビジネス協会(東京都千代田区)によると、駐車場の運営形態の一つとして広まったコインパーキングの発祥は病院・公共施設などの駐車場における無断・無銭駐車防止用だったという。

 そこから、昭和末期の不動産バブル到来で導入された土地保有税により、遊休地に対して高額の税金が課せられるのを避けるため、駐車場として暫定利用する社会的ニーズにマッチする形で増加。さらに平成に入りバブル崩壊と地価暴落で、街中に増えた開発放棄となった、空き地の手っ取り早い活用策として急成長を遂げていった。

 同協会の「『一時利用有料駐車場(コインパーキング)市場に関する実態分析調査』2021年版」を見ると、コインパーキングは2021年4月には、全国で164万1700車室あり、10年前の11年の91万車室よりも約73万車室増加していることがわかる。特に500㎡未満のコインパーキングは、43万車室から96万5500車室と倍増している。(図表1)

 

協会の理事長に聞く 30年変わらなかった業界の変革期到来

進むキャッシュレス化

「30年変わらなかったコインパーキング業界が今変わろうとしています」。こう話すのは、一般社団法人日本パーキングビジネス協会の清家政彦理事長だ。大きな変化をもたらしている最大の理由は、キャッシュレス化だ。図表2は同協会の前述の実態調査を基に作成したものだが、コインパーキング業界では3年ほど前から現金を扱わない「QRコード(2次元バーコード)」を利用した決済やアプリ決済を導入するケースが増えている。

「キャッシュレス化が進むと、精算機が必要なくなるので、これまで運営事業者として負担だった集金業務が軽減されるのです」(清家理事長)。従来の現金での精算の場合、集金業務をはじめ、釣り銭の不足やコインの詰まりなどのトラブル対応は、運営事業者にとって大きな負担だった。だが、キャッシュレス化が進めば、こうしたこれまでのトラブルを解消できる。

 さらに、これまでは小規模な土地では集金業務の効率が悪いため、コインパーキングの設置ができなかった。だが、キャッシュレス化により、土地の狭さはそれほど大きな障壁ではなくなったという。立地が良いのに、土地の狭さで断念してきた場所にも設置のチャンスが生まれそうだ。「郊外の、高齢者の利用が多い地域は現金精算のほうがいい場合もあります。都市部の精算機をキャッシュレス化するために撤去して、地方・郊外エリアに設置するということを私が代表を務める会社では進めています」(清家理事長)

 そのほかにも硬貨が新しくなる際の精算機対応にかかる、手間とコストの課題が解消。キャッシュレスであれば、看板一つの対応で済むことから業界にとっては運営コストも軽減される。

 

コインパーキングの種類

インバウンドに商機

 気になるのは、車の保有台数が伸び悩む中で、コインパーキング市場はどうなるのかということだろう。

 清家理事長は「車の保有台数が減っても、コインパーキングの稼働は増えるのではないか」とみる。理由としては、インバウンド(訪日外国人)の増加を挙げる。インバウンドが増えることで、レンタカーやカーシェアの利用者の増加が見込めるからだ。

「今後ますます旅行はパーソナルになるのではないかと思います。車は保有しなくても運転免許を持っている人はいます」(清家理事長)

 自動車業界にも変化が表れている。ソニーや米アップルが自動車の開発に乗り出しているのだ。こうしたITに強い異業種からの参入により、ますますアプリとの連携が重視され、キャッシュレス化が普及するだろう。

(2024年2月号掲載)

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