自然の中にもう一つの家を持つ
会員制セカンドホームサービスを提供
「都市から自然に繰り返し通い、生活を営む」という新しいライフスタイルを提案するSanu(サヌ:東京都中央区)。遊休地を取得し、国産木材を100%使用したオリジナル建築による宿泊施設を展開している。日本の別荘市場に独自のビジネスモデルを取り入れ、新たな宿泊体験を創出する福島弦CEOに話を聞いた。
Sanu(東京都中央区)
福島弦CEO(37)
2025年に200室展開へ
「人と自然、都市と地方をつなぐ社会インフラをつくっていきたいと思っています」
サブスクリプション型の宿泊サービスを手がけるSanuの福島弦CEOは、自然の中で暮らしたいという都市生活者の要望を、独自のビジネスモデルで叶えている。そのサービスが「SANU 2nd HOME(サヌセカンドホーム)」だ。別荘の保有でもなく、ホテルへの短期滞在でもない新たな生活体験を提供し、ユーザー会員を増やしている。
▲施設にはキッチンが付帯している
Sanuが取得した土地に「SANU CABIN BEE(サヌキャビンビー)」という独自の建築商品を建て、月額制で宿泊権を提供する。予約やチェックイン、決済はすべてオンラインで完結。宿泊時に発行される4桁の暗証番号をスマートロックに入力することで部屋への出入りが自由に行える。チェックアウト時には、施設の管理を委託する地元の事業者がリネンの交換や清掃を行うことで、無人管理型の運営を実現している。
SANU CABIN BEEは環境共生型建築として、コンクリートの使用を極力抑えた独自の建築商品だ。6本の鋼管杭の上に、国産木材を100%使用した建物を載せて作っている。施設は定員4人で、大人2人、子ども2人程度までの利用を推奨。ワークスペースやキッチンも付帯しており、働きながら暮らすように宿泊できるのが魅力だ。
月額5万5000円(別途1回の利用につき清掃費として3300円がかかる。いずれも税込み)で希望する施設に宿泊できる。21年11月のサービス開始以降、会員数を伸ばし、約3000人が登録する。
宿泊施設は都心から3時間以内でアクセスできる場所を目安に開設している。静岡県伊豆市、長野県軽井沢町、栃木県那須町など20拠点、102室を展開。会員層は30代半ばのDINKS、小さな子どもを持つヤングファミリー層、50代以降のアクティブシニア層がそれぞれ3割ずつとなっている。24年4月3日には、金融機関などから施設の開発資金として70億円を調達したことを発表しており、25年3月までに30拠点、200室の開設を目指す。
所有権付きプランも開始
▲環境負担を抑えながら建築するSANU CABIN BEE
24年2月にリリースした新プランが、建物の共有持分を取得できる共同オーナー型プランの「SANU 2nd HOME Co–Owners(サヌセカンドホーム コオーナーズ)」だ。年間の宿泊日数に応じて330万円(税込み)から販売する。
第1号案件「SANU STUDIO RAY(サヌスタジオレイ)」は、千葉県館山市にて9月に開設する。東京都内から1時間半でアクセスでき、目前のビーチまで徒歩10秒という立地だ。客室面積は47・17㎡とバルコニー5・67㎡で間取りはワンルーム。最大4人まで宿泊でき、全室にプライベートサウナが付いている。
購入代金のほか、管理費と固定資産税、火災保険料、修繕積立金が必要になる。権利形態は建物所有権(共有持分)と事業用定期借地権30年。所有物件においては最大12連泊が可能。所有物件のほか全拠点の施設にも滞在できる。利用しなかった泊数は友人への贈呈やSanuによる買い取りも可能だ。
第1号案件は3月2日に販売を開始し、全200口が2時間半で完売した。第2号案件は山梨県北杜市と栃木県那須郡での開設を予定しており、7月中旬に発売予定だ。
福島氏は北海道札幌市に生まれ、自然が身近にある環境で育った。外資系大手コンサルティング会社に勤務するなど、日々忙しく働きながら家庭を築く中で、自身や子どもが自然と触れ合う時間を増やしたいと思う場面が多くなったことがSanuでの取り組みにもつながった。「空き家問題に加え、『空き土地』の有効活用も大きな課題として捉えています。今後も魅力のある土地に拠点を開設していきたい」
▲眼前に海を望む千葉県館山市のSANU STUDIO RAY
(2024年7月号掲載)
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